<熊本地震>きょうも奔走、避難所の生活支える「ボランティア救護班」
「待っとります。絶対、帰ってきてよ」。熊本県西原村の河原小学校の体育館で、24日朝、救護班のひとり、坂本みどりさん(56)は、80歳代の夫婦に声をかけた。夫婦の自宅は大きく壊れ、もう住めない。とりあえず大阪府に住む娘の元に身を寄せるという。「帰ってくるけん。帰ってくるけん」と繰り返すおばあちゃんを、坂本さんはぎゅっと抱きしめた。少し涙ぐんでいるように見えた。
16日未明の本震発生直後、通常、看護師や介護職に従事する地元の女性7、8人がボランティアとして結成した救護班。体育館内のミーティングルームに救護室を作り、救護はもちろん、「何でも屋」として大活躍している。なんでも話すことができる、おばちゃんたちの「おしゃべりネットワーク」が、災害弱者のお年寄りの避難所生活も支えている。 班メンバーの大半は避難者。発生以来、救護室に寝泊まりし、24時間態勢で対応。「トイレットペーパーがなかですよ」「カップ麺に使うお湯は、どこですか」「生理の血が服まで漏れてしまったけど、どうしよう」。あらゆる相談や問い合わせに応え、避難者からの信頼を得たことが、体調を崩しがちなお年寄りの情報把握にもつながっている。 この避難所で生活する避難者の6割強が高齢者だ。 17日夕方、70歳代の女性がいなくなった。女性は軽度の認知症を患う。消防団員らが捜索活動を始めようとしたところ、他の避難所に救難物資を届けて帰ってきた坂本健一さん(64)が、近くの山に続く道で女性を見かけていたことを報告。日が落ちる直前、女性は山道で保護された。「歩いているおばあちゃんの『様子がおかしい』と気に留めていたことが功を奏した」と坂本さん。 以来、避難所では、出入り口に人を24時間配置するようにした。 救護班のメンバーたちもお年寄りの情報をより詳細に把握する重要性を痛感。特に、独居や夫婦だけの高齢避難者については、本人はもちろん、近所に住む人や、訪ねてきた家族とおしゃべりして、建康面や通常の介護状況を尋ねるようにしている。 班のメンバーの平均年齢は50代半ば。耳鼻咽喉科や皮膚科、精神科などの様々な診療科や介護現場に勤務した長年の経験を生かし、避難者の相談内容によって、より詳しいメンバーが応じるようにした。