月組・珠城りょう、愛希れいか、美弥るりか、月城かなとの4人の関係性が気になる宝塚歌劇「BADDY-悪党は月からやって来る-」
2018年に月組で上演された「BADDY」は多くのファンを熱狂させた作品である。作・演出は上田久美子。「これまでのショーとは一味違う」と言われている作品だが、ラインダンス、トップコンビのデュエットから男役群舞、羽根を背負うパレードまで、タカラヅカのショーならではの見どころは満載だ。その上で一場面ごとに一石投じてくる痛快さがたまらない。 【写真を見る】美弥るりか、珠城りょう、月城かなと 物語の舞台は、遠い未来のピースフルプラネット「地球」だ。世界は統一され、戦争も犯罪もなく、全世界「禁煙」。人生の目的は「天国に行くこと」である。正直「ちょっと退屈?」と、この国の王子(暁千星)は思っている。 そこに現れるのが、月からやってきた大悪党のヘビースモーカー・バッディ(珠城りょう)。彼に立ちはだかるのが地球の平和を守るグッディ捜査官(愛希れいか)だ。 バッディとともに月からやってきたスイートハート(美弥るりか)はバッディとは相棒のようでもあり、恋人のようでもある。いっぽう、真面目で純朴なポッキー巡査(月城かなと)はグッディに密かに想いを寄せているが、仕事熱心なグッディは気付きもしない。ところが、バッディとグッディが出会うことで、この4人の関係が崩れていく。 善なる人々が悪の魅力に取り憑かれていくさまが、中詰の盛り上がりの中で表現される。「良い子でいたい」気持ちと「悪いことをしてみたい」気持ち、誰もが持つ二つの本性がぶつかり合って火花を散らす。 やがて地球の平和は乱され、ポッキー巡査(月城)も変わり果ててしまったかのように見える。怒りを爆発させるグッディ捜査官(愛希)。だが、そこでグッディは初めて「生きている」ことを実感するのだった。この感情の動きが、ラインダンスで表現される。娘役中心で構成されるラインダンスには潔いパワーがある。 何としてもグッディの関心を取り戻したいバッディ(珠城)は、地球一安全だといわれるビッグシアターバンクに収められている惑星予算を盗み出すという大悪事を思い付く。バッディ一味がビッグシアターバンクの舞踏会に忍び込むさまが、黒燕尾の男役たちによるダンスでスリリングに描かれる。 国家予算は盗み出されてしまい、「悪」が勝つのか?と思いきや、最後の最後に地球を救うのはポッキー巡査(月城)である。弱気だったポッキー巡査が自らの命を賭けることで最高にカッコいい男に生まれ変わる。大どんでん返しである。 炎の中、もはや離れることができないバッディとグッディ。互いに反発しあいながらも惹かれ合う二人の心模様がデュエットダンスで表現される。ちょっぴり頼もしくなった王子(暁)の歌で、お約束どおりのパレードが始まる。やはりタカラヅカはこうでなくてはいけないのかな?と思いきや、そうは問屋が卸さない。最後の最後までどんでん返しが待っている。扇子からタバコに早変わりするシャンシャンにも注目したい。 文=中本千晶
HOMINIS