全部が鉄。旧車好きはこういうバイクが欲しいんです。ブリット350【165cmで足つきチェック】
実用車を思い出させる武骨さ 鉄フェンダーが最高だ
ブリットは、近年は流行りの「ネオレトロ」とは明らかに違うマシンだった。驚いたのは前後フェンダーがスチール製であること。現代のバイクの常識(重くなる、錆びる、高くつく)から言えば、新発売のモデルに鉄フェンダーはないだろう。しかし真っ黒なボディに、やや野暮ったい大きなフェンダーは、旧車そのものの重厚感を放っていた。ただし華やかなロードスポーツマシンとは違う。その雰囲気は黒塗りの実用車。バイクが貴重な家庭の足だった時代の匂いだ。 その雰囲気はもちろんフェンダーからのみ発散されているわけではない。太いフォークカバーやごつめのシートもそうだし、分厚いメッキのキャブトンタイプのマフラーも、そして「殿様乗り」を自然にさせてくれるアップなハンドル位置も、リアルなレトロさにあふれている。それでいて装備はもちろん現行車。ブレーキはきちんと前後ともに油圧ディスク、インジェクションで安定した吸気。電子制御はほぼなく、前後のABS程度ではあるが、それ以外はまあ不要だろう。
足つきはクラシック350と並びシリーズで最も悪し!
外見をほめちぎってしまったが、足つきはあまりよくない。よくない、と言っても、不安はもちろんないのだが。18インチのリアホイールのおかげでリア周りがボリューミーに見えつつ、シート高の数値は805mmで、これは車重と同じくクラシック350と共通。165cm/50kgの体格だと、両足をおろすとカカトが完全に浮く程度。ややサイドカバーが大きく、足を開き気味になるのもネガティブな要素だ。引き起こしも少し重い。金属パーツ大量装備であるから、これは仕方ないと言いたい。 とはいえ、足は片足を上げればべったり接地することができ、不安定さはなし。同クラスのシリーズにもまたがった中では、最も足つきが悪いといえるのだが、それでも取り回しに不安は覚えなかった。
スピードは出さなくていい! という感じながら、意外と軽快に旋回
さて、乗り出すと豊かなトルクで低回転から力強く前へ蹴りだされる。このビッグシングル特有の感覚はブリットでも健在だ。しかし軽快に加速できるのは高速道路の制限速度くらいまで。それ以上はスロットルを開けども苦しそう。スペックからでもわかることだが、スピーディーでキビキビした加減速というのは難しそうだ。 しかし意外にも旋回性はよい。ポジションが操作性を全然邪魔しないためか、クルックルと小気味よいコーナリングが楽しく、立ち上がりもポコポコ!と元気そのもので、コントロールが楽しいのも個性的。スポーティーなハンターや、ノンビリしたメテオとも違う独特のフィーリングは、ツーリングにも街乗りでも、景色を見ながら走るのにピッタリだろう。レトロなバイクが好きなライダーには文句なくおススメしたいマシンだった。
ブリット350(2024)主要諸元
・全長×全幅×全高:2145×750×1125mm ・ホイールベース:1390mm ・シート高:805mm ・車重:195kg ・エンジン:空冷4ストロークSOHC単気筒2バルブ 349cc ・最高出力:20PS(14.9kW)/6100rpm ・最大トルク:2.75kg-m(27Nm)/4000rpm ・燃料タンク容量:13.0L ・変速機:5段リターン ・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク ・タイヤ:F=100/90-19、R=120/80-18 ・当時価格:69万4,100円~
西田 宗一郎