桐蔭学園、夏への宿題 「あと1打」足らず /神奈川
<2019 第91回センバツ高校野球> 第91回選抜高校野球大会第5日の27日、県勢の桐蔭学園は初戦を迎え、啓新(福井)に3-5と惜敗した。桐蔭学園は初回に2点を先制されながらも、二回と七回の2度にわたって1点差に追い上げ、先発の伊礼海斗投手(3年)も141球の粘投。勝利にあと一歩及ばなかったが、選手たちは粘り強い「桐蔭らしさ」を見せた。【洪〓香、池田一生、日向米華】 【熱闘センバツ全31試合の写真特集】 ……………………………………………………………………………………………………… ▽1回戦 啓新 210001001=5 桐蔭学園 020000100=3 桐蔭学園は序盤に3点を奪われたものの、守備からリズムをつくった。二塁手の山本慎太朗選手(3年)が一、二塁間のゴロをダイビングキャッチして初回のピンチを2失点でしのぐと、続く二回には清水聖捕手(3年)が好送球で三塁走者を刺した。 そして迎えた二回裏。4連打で2点を返す。チーム初得点となる適時打を放った清水捕手の父厳さん(49)は「打ってくれて良かった。次もつないでほしい」と目を細めた。さらに山本選手は次の森敬斗主将(3年)に「つなげたい」と、2点目となる適時打を放つ。「ボール球に手を出してしまったが、なんとかつなげられた」。スタンドの父健之さん(49)は「思いっきり振ったのが、いい結果につながった。この後も思い切りプレーしてほしい」と話した。 先発のエース、伊礼投手は序盤に制球が乱れた。「慎重になりすぎてカウントを悪くし、甘いコースに入った球を打たれた。球も浮いてしまった」。ただ、昨秋の明治神宮野球大会でも同じ経験をした反省から、自ら修正し、徐々にペースを取り戻した。毎回のように走者を背負いながらも、持ち味の打たせて取る粘りの投球を見せた。 試合は接戦のまま終盤に入り、桐蔭学園の反撃は七回裏。森主将の適時内野安打で1点を返す。だがその後は相手のリリーフ投手を打ち崩せなかった。 「練習不足だった」。森主将は試合後、何度も口にした。悔やまれるのは、1点を追う二回2死満塁の場面。三振に倒れ、同点のチャンスを逃した。「あと一打が足りなかった」と肩を落とした。 九回途中まで141球を投げ切った伊礼投手は「中盤はインコースも攻めることができた。その部分は収穫だった」と語り、雪辱を誓った。父正喜さん(55)は「序盤はなんとかしてくれるという思いで見守った。息子にはお疲れさまと言いたい。夏に向けて、またもうひと踏ん張り、がんばってほしい」と労いの言葉と拍手を送った。 ◇双子が挑んだ甲子園 冨田健悟選手(2年) 双子の兄弟そろってセンバツに出場した。弟は横浜高校の左翼手、進悟選手(2年)。横浜は24日の初戦で明豊(大分)に敗れた。「球場の雰囲気にのまれず、自分のプレーを見失わないで」。弟の悔しさを背負い、甲子園の打席に立った。 2点を追う七回裏、先頭で反撃の口火を切る二塁打を放った。弟のアドバイス通り「落ち着いて打席に入ることができた。納得いくスイングで変化球をとらえられた」。好機を演出し、森敬斗主将(3年)の内野安打で生還した。 進悟選手とは二卵性の双子だ。自分は母親似だが、弟は182センチと長身の父親似。性格も異なる。読書が趣味の自分とは違い、弟は幼い頃から体を動かすのが大好きだった。 ただ、共に野球好きで、中学までは同じクラブチームに所属。小学生の頃に自分が捕手、進悟選手が投手のバッテリーを組んだこともある。中学1年の夏には日本代表で参加した世界少年野球大会で、それぞれ本塁打を放った。母雅子さん(52)は、「こんな『奇跡』は二度とない」と驚愕(きょうがく)していたという。 「高校野球で戦おう」。兄弟はその後、別々のチームに進んだ。健悟選手は一般受験で進学校でもある桐蔭学園に。進悟選手は小学生の頃から憧れていた名門・横浜高校を選んだ。「健悟が勉強している間、僕は野球をやってきた。打撃は絶対に負けない」。ライバルとして「双子対決」を誓い合った。 再び奇跡が起こる。高校入学からわずか半年後、昨秋の神奈川県大会決勝の舞台で桐蔭学園と横浜が対戦。「双子対決」が実現した。さらにそろってセンバツ出場が決まった。普段は別々の寮で生活しているが、センバツの期間中は同じ宿舎に泊まり、久々に会話を楽しんだという。 良きライバルでもある弟と共に臨んだ初めての甲子園は、初戦敗退で悔しさが残った。ただ、取り組んできたことの手応えと今後の課題もわかった。「夏の県大会決勝で進悟のいる横浜に勝って、甲子園に戻りたい」【洪〓香】