『HUNTER×HUNTER』クラピカの復讐はどうなる? 幻影旅団とクルタ族の因縁に隠されたミステリー
※本稿は『HUNTER×HUNTER』最新話までの内容を含みます。ネタバレにご注意ください。 【写真】ゴン、キルア……ファンには嬉しい『HUNTER×HUNTER』コラボのメガネ 『HUNTER×HUNTER』で現在進行中の「王位継承編」では、クロロ率いる「幻影旅団」がメインキャラクターの一角として登場。今まで謎に包まれていた結成秘話なども明かされ、その真実の顔が描き出されつつある。 そこで今回注目したいのが、クラピカとの因縁との発端でもある「クルタ族虐殺事件」だ。実はそこには、意外な真相が隠されているのかもしれない。 最初におさらいしておくと、「幻影旅団」は本編が始まる4年前、「緋の眼」を奪うためにクルタ族を皆殺しにしたとされている。クラピカいわく、同胞たちの亡骸からはすべての目が奪い去られていたという。 しかし9月4日に発売された単行本38巻では、そんな凄惨な事件について新たな視点が与えられることに。第395話から第397話にかけて、「幻影旅団」が結成されるまでの経緯を描いた過去編が描かれたのだが、そこから受ける印象は“極悪非道な盗賊グループというイメージ”とはかけ離れたものだった。 「幻影旅団」の創設メンバーたちは、人権すら成立していないほどの危険で劣悪な環境だった流星街で幼少期を過ごした。そこでクロロを主導として人を楽しませる劇団として活動し始めるが、仲間だった少女・サラサが殺されたことをきっかけに、犯人への復讐を決意。さらに流星街を守るため、自分たちを全世界が震え上がるほどの“悪”としてデザインすることを目指すようになった……。 つまり「幻影旅団」のメンバー自体が別の残虐による被害者で、悪党というイメージもあえて自ら演出したものだと分かったのだ。しかしそうだとすると、例の事件について「本当に彼らが犯人だったのか?」という疑惑が生じてくるだろう。 というのも悪人たちに緋の眼を狙われていたクルタ族の境遇は、日常的に人間狩りの被害に遭っていた流星街の住人たちの境遇と重なっているように見える。いくら悪党として振る舞うといっても、クルタ族の人々を虐殺することをクロロは肯定するだろうか。 しかも『HUNTER×HUNTER クラピカ追憶編』として刊行されたエピソードでは、クルタ族を襲った者が想像を絶するほど残虐な手段をとったことが明かされていた。とくに重要なのは、子どもの方がより無残に傷つけられていたと記されていることだ。百歩譲って大人への虐殺までは認めるとして、サラサの件を無念に思っている「幻影旅団」メンバーが子どもへの拷問じみた行為を行ったとは考えにくい。 そこで浮上してくるのが、クルタ族の側に原因があったという「復讐説」と、実は他に真犯人がいるという「冤罪説」の2つだ。 ■事件の裏にはカキン帝国の関与があった? まず「復讐説」から説明すると、そのカギを握っているのは過去編と『クラピカ追憶編』の両方に登場するシーラという人物だ。 彼女は元々クロロたちの仲間だったが、「幻影旅団」結成のタイミングで去っていったようで、現在の時間軸では一切登場していない。その一方、『クラピカ追憶編』では、プロハンター志望の少女として幼少期のクラピカと出会っていた。 シーラは足に怪我を負って森で倒れていたところを助けられ、お礼として冒険活劇書を授けることで、クラピカがハンターに憧れるきっかけを作ったという役回りだ。 ここで気になるのは、「シーラはなぜ怪我をしていたのか」ということ。もし何者かの攻撃が原因だとすれば、1つの推論を行うことができる。すなわち何らかの理由でクルタ族がシーラを狙っており、彼女が何も言わずに姿を消したのも“始末”された結果だった。そしてその事実を知った「幻影旅団」が復讐のために村を滅ぼした……というわけだ。 さらに飛躍して考えるなら、「そもそもサラサが殺された件にもクルタ族が絡んでおり、シーラが村を訪れたのはその調査のためだった」という可能性もゼロではないかもしれない。こうした仮定があれば、「幻影旅団」がサラサにやられたのと同じレベルの凄惨さでクルタ族を襲ったとしても納得できるだろう。 他方で「冤罪説」に立つなら、クルタ族を襲ったのは「幻影旅団」とは別の勢力ということになる。シーラが村を訪れたのはたんなる偶然で、怪我をしたのも不慮の事故に過ぎず、虐殺の現場にあった「我々は何ものも拒まない だから我々から何も奪うな」というメッセージは、「幻影旅団」の悪名を利用して濡れ衣を着せようとした第三者の計らいだったのかもしれない。 ウボォーギンなどのセリフから、かつてクルタ族と「幻影旅団」が接触したことがあったのは確定しているが、それは虐殺とは別の出来事だったのではないだろうか。 あるいはもう1つの冤罪の形として、第三者がクルタ族のフリをしてシーラを襲うことで、「幻影旅団」襲撃のきっかけを作り出した……という可能性も考えられる。 いずれにしても、重要なのは第三者が何者なのかということだが、今のところその候補を1つに絞ることは難しい。だが、「王位継承編」ではクラピカと「幻影旅団」の因縁が進展する気配を見せていることから、カキン帝国の関与、具体的には第4王子ツェリードニヒ・ホイコーロの関与を疑ってみたい。 ツェリードニヒは緋の眼の最後の持ち主として登場しており、作中トップクラスに残虐な性格の持ち主。クルタ族の事件が起きた時はまだ10代だったものと思われるが、カキン帝国の権力は絶大なので、ひそかに配下を動かして自身の欲望を満たしていたとしてもおかしくはなさそうだ。 もしクルタ族虐殺事件の真相が異なるものだったと判明すれば、「幻影旅団」への復讐に人生を賭けてきたクラピカは大きな衝撃を受けるだろう。はたしてこの事件の裏には、いかなる真実が隠されているのだろうか……。激動の展開が続く「王位継承編」、その熱量は増していくばかりだ。
キットゥン希美