成長戦略でも注目、「ビッグデータ」って何?
安倍政権は、6月14日に民間の経済活動を刺激する政策集である「日本再興戦略」を閣議決定しました。この中では日本の産業を再興するためのプランがまとめられています。その柱の一つである「世界最高水準のIT社会の実現」を支える重点テーマが「ビッグデータ活用の推進」です。
購買履歴から商品のおすすめも
ビッグデータとは、これまでの技術では扱えなかったほど大容量のデータを指します。社会のすみずみまでコンピュータやセンサーが行き渡り、日々、多様で膨大な量のデータが生成されていますが、技術の進歩や低価格化により、一般企業などでもこうしたデータを処理しビジネスに役立てたりすることができるようになってきました。 ソーシャルメディアのクチコミの分析から社会の関心事を即時に把握したり、会員データや購買履歴を分析して需要予測や各自の好みに応じた商品のお勧めをしたりするのは典型的なビッグデータ活用事例です。他にも、自動車の運転状況をカーナビから取得して交通渋滞を回避させたり、道路や橋などの社会インフラの破損状況を多数のセンサーで把握して事故予防に役立てたりするといったことも始まっています。さらには医療機関の診療データや生活習慣などを分析して病気の予防や製薬に役立てたり、クレジットカードの不正な利用パターンを精緻に分析することで犯罪対策に役立てたりするといったことも行われています。
プライバシー保護が課題
日本は世界で最も安く高速なインターネット環境を持つ国のひとつですが、ITの利用面では世界の最先端ではありません。そこで政府は、インフラ整備ではなくITの利用=データ利用に重点を置き、障害となってきた制度や組織などを改革していく方針です。情報を資源として使い、経済成長や社会の課題解決につなげるのです。 ただし、データ活用社会は明るいことばかりではありません。膨大に蓄積した情報から本人が知られたくないプライバシー情報を割り出してビジネスに活用されたり、そうした情報を流出させられたりする可能性があります。そこで情報を提供する際の本人同意の取り方や、異なるデータを紐付けることで個人が特定できてしまう場合の取り扱いなどについてルールを整備する必要がありますし、企業や政府機関のデータ利用がプライバシー保護の観点から適切であるかを監督する機関を設置したりしていく必要があります。 (庄司昌彦・国際大学GLOCOM講師/主任研究員)