「やる気が出なくて勉強できない」「数学が苦手で化学が解けない」説明のプロはどうアドバイスする?
自分の説明には説得力が足りない、と思ったことはありませんか。『「よい説明」には型がある。』の著者、犬塚壮志氏によれば、聞く人が納得する“よい説明”とは、「因果関係にインパクトがある説明」だといいます。しかし、因果関係をどのように考えたら、インパクトを与えることができるのでしょうか? 説明のプロである犬塚氏が実践してきた、二つの必勝パターンを伝授します。(大学受験専門塾「ワークショップ」情報科講師/株式会社士教育代表取締役 犬塚壮志) 【“説明のプロ”のテクニックを図で分かりやすく解説!】 ● 説明に説得力をもたらすものとは? ヒトは「因果関係」が大好き 突然ですが、最も説得力のある「よい説明」とは、どのような説明でしょうか? それは一言でいうと、「物ごとの因果関係にインパクトがある説明」です。 私は長年、予備校講師として20年以上、「説明」というものを行ってきました。さらに、自分の説明スキルを向上させるために、1000人以上の話し手の分析も行ってきました。こうした経験を通じて改めて思うことは、「ヒトは因果関係が大好き」ということです。つまり、あなたの説明で因果関係を明確にしたり、因果関係にインパクトを持たせたりすることで、あなたの説明は飛躍的に理解されやすくなり、かつ、覚えてもらいやすくなります。 それでは、説明における因果関係にインパクトを持たせるためにはどうすればいいのでしょうか?今回は、誰でも使えるテクニックとして、この手法を紹介します。
● パターン1: 第3の因子を見つける~「化学が苦手」理由は、数学?それとも? 因果関係にインパクトを持たせるための効果的な手法は、以下の二つのパターンに分けられます。いずれか一つでも使えるようになると、簡単に「よい説明」ができるようになります。 【因果関係にインパクトを持たせる方法】 パターン1:第3の因子(真因)を見つける パターン2:因果関係を逆転させる 一つずつ説明していきましょう。 パターン1「第3の因子(真因)を見つける」は、それまで聞き手の中で因果関係にあると思われていたことに、まったく別の第3の因子(これを真因と呼びます)が潜んでいた場合に使える説明です(図1)。 例えば私は、予備校で受け持っているクラスの生徒から、「数学が苦手なので、化学の計算問題が解けないんですけど、どうしたらいいですか?」という相談をよく受けます。このとき生徒は、「数学が苦手」を原因、「化学の計算問題が解けない」を結果としてとらえています(図2)。 しかし、実際の受験化学で必要とされる高校数学というのはほんの一部で、それ以外の高校数学のスキルはほとんど必要ありません。つまり「数学が苦手」であることは、「化学の計算問題が解けない」ことの原因とは考えにくいのです。では、どのようなことが本当の原因として考えられるのでしょうか? 私がこれまで2万人以上の生徒を見てきた経験からいうと、化学の計算問題が解けない理由で最も多いのは「文章読解力の不足」です。「文章読解力って、国語で必要なものでは?」と思う方もいるでしょう。もちろん、国語にも読解力は必要です。ただ、化学の計算問題というのは、特に応用問題になればなるほど複雑な実験操作や細かな条件設定などが入ってきて、問題文章が長くなる傾向があります。そのため読解力がないと、「結局、何の計算をすればいいのか」「問題文章中のどの数値や情報を拾えばいいのか」が、問題文章を読んでも分からないのです。