米国「利上げ終了」で注目される投資先…キーワードは“勝ち組国家”【投資のプロが解説】
米国の利上げは「7月で終わった」との見方が優勢で、現在の市場の注目は「米国利上げ終了後の投資テーマ」に移っています。では、これからどのような投資テーマに注目していけばよいのでしょうか。カギとなる米国経済の状況と具体的な投資先について、アライアンス・バーンスタイン株式会社の運用戦略部長兼ポートフォリオ戦略室長である荒磯亘氏が解説します。 【画像】「30年間、毎月1ドルずつ」積み立て投資をすると…
2023年の相場環境は「FRBの思いどおり」?
――ちょうど2022年の終わりに、御社は「米国は物価が下がるまで高金利をキープする」というシナリオを案内していました。2023年も終盤に入り、ここまでの相場環境をどうみていますか? 荒磯「FRBの思いどおりのゲーム運びになっています。利上げが終わらず金利は高いため、米ドルは堅調で、円安傾向の為替相場が続いています。株式市場や経済活動の堅調さも、利上げによる景気腰折れ懸念を払拭していると思います」 ――利上げによって経済が減速するのではと身構えていましたが、ここまではいわゆるソフトランディングに成功しています。ここから先は、利上げは必要ないのでしょうか? 荒磯「[図表1]をご覧ください。こちらは米国の政策金利の推移予想です。市場では2023年7月に利上げは終わったのではないかといわれていますし、私もそのようにみています。 FRBはなかなか先行きの言質を与えない対応を続けていますが、足元では、“利下げが必要な環境にはしばらくならない”といった意見が広がっています」 家計は強い、企業は弱い…米国経済が持つ「2つの顔」 ――それほど米国の経済は堅調なのですか? 荒磯「米国経済が強いのか弱いのかは、少しわかりづらい面があります。それを象徴するのが米国経済の2つの顔、家計と企業のセンチメントです[図表2]。 家計の強さは、賃金の上昇が下支えとなっています。雇用が堅調なため、インフレを賃金の上昇が吸収してきました。 一方で、企業の景況感は不況を警戒するレベルにまで下がっています。いずれ企業の弱気な姿勢が個人消費の減退につながる可能性があります。投資を考える際には、少し強気を控えたほうが安全かもしれません」 株式以外なら注目したい「投資適格債」 ――投資スタンスとして強気を抑えるということですが、そうなると株式以外になにか魅力的な対象はありそうですか? 荒磯「金利の水準が上がりましたので、債券でインカムを確保しやすくなっています。かつてのハイイールド社債と同程度の利回りが投資適格社債で確保できるのです[図表3]。比較的安全な投資で高いインカムを獲得できる環境にあります」 ――高い格付けの投資適格社債で高い利回りを同時に狙えるのは魅力的ですね。