【アイスホッケー】「お互いを尊重し合う。それを大切に42歳までやってきました」小原大輔さん・引退インタビュー
41歳になって未知のチーム東北へ。 かつての仲間の存在が大きかった。
――2020-2021シーズンから2年間、日本製紙から「ひがし北海道クレインズ」となったチームに移籍しました。全日本選手権では2年間とも優勝していますが、経済的に不安要素もあったと思います。 小原 自分のモチベーション的に冷静に保ちながらやっていくのが、正直、大変でした。2022-2023シーズンは契約しようと思えば契約できたんですけど、「もし来年も(給料未払いの状況が)続くようだったら、どうしよう」と思ったんです。(当時)41歳になるし、まずは「家族と一緒に過ごすこと」を優先的に考えるべきだと。オフには仕事探しをしながら、でも、もしホッケーをやることになったら困るから、一応、体を鍛えておいて…。 ――それで2022-2023シーズンからは2年間、東北フリーブレイズに在籍します。小原さんにとっては、最後のアジアリーグのチームになりました。 小原 当初、移籍の話し合いの解禁日に、どこからも話がなかったんです。ところが2、3日後にクリスさん(若林・総監督)から連絡が来た。その後に大久保監督(智仁・当時)からも話があったんです。自分は「もう、どこからも話は来ないだろう」と感じていたし、仕事探しを本格的にやろうかなと思っていた矢先だったんですよ。その年の6月に子どもが生まれる予定もありましたし、「もしかしたら移籍は難しいかもしれません」と電話で答えたくらい急な話でした。 ――クリスさん、大久保監督は、かつてコクドやSEIBUで一緒にやった仲間です。小原さんに「フリーブレイズのここを変えてほしい」というスタッフの希望もあったのではないですか。 小原 クリスさんからは「今までの経験をチームに還元してほしい」と言われました。かつてフリーブレイズにはキャプテンの田中豪(FW)がいて、でも今はいない。1年でも2年でもチームにいることで何かを変えてほしい、ということでした。一番の決め手になったのはクリスさん、大久保さん、そして佐藤翔(現マネジャー)らのホッケー仲間の存在です。自分を評価してくれているのであれば、よし、やってみようと決めたんです。 ――「自分を必要としてくれる場所」で生きること。人間にとって、それが一番尊いことなのかもしれません。でも、フリーブレイズにいるSEIBU繋がりは、現役ではもう田中遼(FW)選手しかいないですものね。 小原 フリーブレイズは知っている選手が数人しかいなくて、合流した当初は不安しかなかったです。最初の2022-2023シーズンは、僕のトップリーグでの「連敗記録」を更新していきましたよ。この年齢になってこういう試練が待っていたのかと思いました(笑)。 ――その中で、小原さんが若手に話したのはどういうことでしたか。 小原 「みんなは日本代表を本気で目指しているの?」と、そこから話を始めました。「いやあ、興味がないですね」と言う選手もいましたが、「いや、それは違うでしょ」と。実際、石田陸、ロウラー和輝(ともにDF)と、フリーブレイズから代表に入る選手も出てきました。今年はトップ2には入れませんでしたが、ようやく組織として「上」を目指すチームになりつつあるのかなと感じているんです。