ヤギ専攻の女子高生2人、「ヤギ一本で生活するのは難しい」のにナゼ?…攻撃してくる凶暴な面も
「アルプスの少女ハイジ」には子ヤギのユキちゃんが登場する。その愛らしい姿に「ヤギを飼いたい!」と夢見た人も多いのでは? 実は富山県立中央農業高校では昨年度、5年ぶりに「ヤギ専攻」が復活した。畜産の中でも牛と比べるとマイナー気味なヤギ。生徒たちはどんな思いで学んでいるのだろうか。(岸本健太郎)
「青空教室なんです」
山羊(やぎ)舎は、約30頭の牛が暮らす牛舎から少し離れた場所にある。「舎」と言っても、建物はビニールハウスを改装したもの。その中で6頭のヤギがメーメーと暮らしている。
取材をした日は、生徒たちが建物の横でシートを広げ、いきなり授業が始まった。あっけにとられていると、3年の浦田七海さん(18)が言った。「牛と違って、事務所がないので青空教室なんです」
ヤギ専攻は、浦田さんと岡本唯花さん(18)の2人だ。県東部家畜保健衛生所の職員から、ヤギの習性や伝染病予防のため守るべき飼養衛生管理基準を学ぶ。ヤギは脱走が得意で、ドアは二重ロックにしないと自分で外して逃げる……ということも学びの範囲内だ。
この日は、体重計に乗せなくても体長や胸囲からヤギの体重を割り出す実習があった。測ったのは雄と雌のヤギ「青」と「赤」。かつては「シラス」と「イクラ」と名付けられたが、「誰も呼ばずに忘れ去られ」(浦田さん)、今は首輪の色が名前になった。
牛のつもりで入学したが
浦田さんと岡本さんは入学当初、ヤギ専攻に進むつもりはなかったという。
浦田さんとヤギの出会いは、中学生の時にオープンスクールで同校を訪れたこと。牛舎の横のスペースに「ちょこっと」いたヤギが気になった。育てた牛の肉質を競う「和牛甲子園」の常連となった同校が力を入れる牛に目もくれず、草を食(は)み続けるヤギたち。動物全般が好きだった浦田さんは「スポットライトを当てたい」と感じた。
一方、岡本さんも「牛のつもりでこの学校に入った」が、先生の勧めもあってヤギを選んだ。「目と触り心地のいい耳が好き」と話しながら、ヤギの頭をなでていた。時には、攻撃してくる凶暴な点もあるが、知らない人が現れると近くに寄ってきて頼ろうとするところがなんともカワイイというのだ。