ひろゆき、中野信子と脳を科学する⑥ 「人と接する仕事は、共感力低めの人のほうが向いている!?」【この件について】
ひろゆきがゲストとディープ討論する『週刊プレイボーイ』の連載「この件について」。今回は脳科学者の中野信子さんをゲストに迎えた6回目です。前回は「忘れっぽい人のほうがコミュ力が高い」ということでしたが、今回は「人と接する仕事は共感力が低い人のほうが向いている」という話です。人間ってなんかいろいろ複雑なんですね。 【写真】中野信子いわく「カウンセラーに向いているのは『人に共感的で親身になれる人』ではないんです」 *** ひろゆき(以下、ひろ) 前号は「忘れっぽい人は過去の出来事を根に持たないから、コミュ力が高く友達も多くなりやすい」という話でした。この特徴って、仕事にも生かせそうですよね。 中野信子(以下、中野) そうですね。例えば、カウンセラーに向いているのは、必ずしも「人に共感的で親身になれる人」ではないんです。むしろ、仕事として割り切れる人のほうが適性があるといえます。このことはカウンセラーの基礎教育で最初に教わることのひとつでもあるんですよ。 ひろ 世間的には「カウンセラー=親身になって話を聞いてくれる人」というイメージですけどね。 中野 理由は主にふたつあります。「大変な思いをされているんですね」と患者さんの話を親身に聞きつつも、カウンセリングが終わると気持ちを切り替えられる人でないと、精神的に続かないんです。もうひとつは「転移」や「逆転移」の問題があります。 ひろ というと? 中野 転移は患者さんがカウンセラーに対して特別な感情を抱いてしまうことです。逆転移はカウンセラーが患者さんに入れ込みすぎてしまうことです。これらは専門家として避けるべき状況です。 ひろ なるほど。そうなると割り切って仕事ができる人のほうが向いているということですね? 中野 はい。感情的に巻き込まれない人のほうが、プロフェッショナルとして長く続けられます。 ひろ それって医療全般にいえるかもですね。例えば、がん告知をした際に患者さんと一緒に泣いてしまうような医師では、仕事にならないじゃないですか。あと、営業職も割り切って考える人のほうが成績は良さそう。契約が断られても、すぐ切り替えられるじゃないですか。 中野 あとは弁護士さんなどもいい例ですよね。依頼人の境遇に深く共感してしまう人は、むしろ仕事がやりづらそうですから。 ひろ そうなると、人と接する職業は、共感力が低めの人のほうが向いているということになりませんか? 中野 そうですね。でも、ここが非常にトリッキーなところなんですが、重要なのは「共感力が低くても、相手が何を考えているかを理解できる能力を持っている」ということ。つまり、感情移入はしないけれど、相手の立場や考えを論理的に理解できるということ。たとえるなら、道徳を暗記科目として処理するようなものです。 ひろ その計算して取り繕った共感のしぐさと、本物の共感力って違いがわかるもんですか? 中野 いや、正直なところまったく見分けはつかないと思います。