爽快バトルは玄人だけのものじゃない! 『ゼンレスゾーンゼロ』が提供する“敷居の低い”本格アクション
HoYoverseの都市ファンタジーアクションRPG『ゼンレスゾーンゼロ』が、7月4日にリリースされた。「崩壊」シリーズや『原神』が現在進行系で成功を収めているHoYoverseの最新作の実像を、本格アクションが苦手な筆者の所感をベースにレビューしていく。 【画像】スタイリッシュアクションが特徴の『ゼンレスゾーンゼロ』スクリーンショット 本作を形容するにあたって、多く見られるのは「スタイリッシュ」「アメコミ風」などの表現だ。実際、オープニングはアメコミ調のコマ割りムービーから始まり、戦闘におけるキャラクターたちはスタイリッシュかつスピーディーに動き回る。世界観とゲーム性の概要を説明するうえで、たしかに間違ってはいないだろう。 ただ、個人的に本作最大の特徴と感じたのは、爽快な操作感だ。ここで言う「爽快」とは、派手なバトル演出や敵の体力ゲージが吹き飛んでいく様子だけではなく、“とりあえず押せるところを押しまくる”ことによって、ド派手に敵を蹴散らせるということでもある。良い意味でアバウトな操作だけで、画面の中ではキャラクターが凄まじいアクションを繰り出してくれる。 ガンアクション、剣戟、突進……キャラクターや選択するボタンによって多種多様なアクションが絶え間なく実行され、敵の体力ゲージは削れ、こちらのデシベル値(「終結スキル≒必殺技」を繰り出すためのゲージ)は溜まっていく。そのときの実際の操作は、他者のプレイ動画を見ていて感じるよりも、圧倒的に簡単だ。 そして、これは本作のバトルにおける重要な要素でもある「極限支援」にも当てはまる。簡単に言えば従来のアクションゲームにおける「ジャスト回避」「パリィ」とメンバー交代を組み合わせた行動だ(事実、「極限支援」は「パリィ支援」「回避支援」に分かれる)。 率直に言って、筆者はパリィや回避前提のアクションゲームが得意ではない。というか、むしろ苦手だ。それでもさまざまな“死にゲー”に興味を示しては、難所を突破できずに積みゲーに……ということを性懲りもなく繰り返してきた人種なのだが、だからこそ、最低限の回避行動とスキルで戦闘を楽しめる『原神』や、ターン制で戦闘を“組み立てていく”スタイルの『崩壊:スターレイル』といった、HoYoverseによる作品群は肌に合っていた。 そこに『ゼンレスゾーンゼロ』である。チュートリアルで「極限支援」が登場したとき、使いこなす自信があったと言えば嘘になる。ただ、実際に使ってみると、苦手意識を抱いていた「パリィ」という言葉とは大きく違う手触りが存在していた。誤解を恐れずに言えば、「画面の雰囲気に合わせてボタンを押す」ことによって、最適解にたどり着くことができるのだ。 すでにさまざまな解説記事や動画が出ていることもあり、詳細な解説は省くが、画面上に出てくる金や赤の予兆が表示され、そこに合わせて「極限支援」を発動することができる。従来の「パリィ」「ジャスト回避」と言えば、敵のモーションや技のエフェクトを見て繰り出すものだったが、かなりカジュアルな操作に落とし込まれていると感じた。 それぞれの要素をひとつずつ抜き出していけば、前例がないわけではない、というのも事実だろう。ただ、『ゼンレスゾーンゼロ』の特筆すべき点は、それらの「カジュアルながら爽快感があり、アクションゲームとして誰もが楽しめる」要素を無理なく共存させつつ、バランスを取っていることにある。 前述の「操作が簡単」という言葉とやや矛盾して聞こえるかもしれないが、本作は(少なくとも筆者にとっては)“ヌルゲー”というわけでもない。最低限のシステム理解をしなければかなり被弾もするし、雑魚エネミー相手に苦戦することもあるだろう(ただ、ストーリーでは「カジュアルモード」と「チャレンジモード」から難易度を変更できるため、ゆるくストーリーを楽しみたい場合も安心してほしい)。 もっとも、ゲーム体験における“ある程度のストレス”は、楽しさを得るために必要不可欠なもの。プレイヤーのスキルが直接反映されやすいアクションゲームは、ストレスの感じ方に差異が生じやすいジャンルでもあるが、『ゼンレスゾーンゼロ』は敷居を下げながらも、本来アクションが持っている“気持ちよさ”をオミットしないように組み上げるという作業が丁寧になされている印象だ。もしかしたら、本作でアクションゲームにハマり、同ジャンルの名作たちに手を出す人もいるかもしれない。 そんなアクションゲームとしての完成度の高さにくわえ、周知のとおり、「都市ファンタジー」と銘打つ世界観も従来のHoYoverse作品とは一線を画す本作。ゲーム性・世界観のいずれか、あるいは両方が原因で『原神』や「崩壊」シリーズが肌に合わなかったという人にとっても、触ってみる価値のあるゲームに仕上がっている。「新エリー都」での生活は、それほどにユーザーフレンドリーな体験だ。
片村光博