【快進撃の尾上松也】新たに魅せる舞台でのチームワークの秘訣とは?
歌舞伎からドラマまで幅広い場で活躍を続ける尾上松也。9月6日からは舞台『夫婦パラダイス~街の灯はそこに~』で主演を果たす。作品にかける熱い想いを聞いた。 尾上松也さんの写真をもっと見る
無頼派作家・織田作之助の人気作『夫婦善哉』の主人公・柳吉とお蝶をモチーフにしたオリジナル戯曲、『夫婦パラダイス~街の灯はそこに~』。尾上松也は柳吉、お蝶にあたる蝶子は瀧内公美が演じる話題作だ。当代きっての演技派が顔をそろえる今作の見どころを聞いた。 尾上松也(以下、松也) まず台本を読ませていただいて、楽しそうで面白そうで、けれど不思議な世界だなと思わされるファンタジックな要素もあり。よくわからないという感覚が襲ってきて(笑)、ワクワクしましたね。 ──ワケありのカップル柳吉と蝶子。流れ着いたスナックのママ信子(高田聖子)は蝶子の腹違いの姉で、失踪中の亭主藤吉(鈴木浩介)を待つ身の上。近所の出前持ちの静子(福地桃子)や羽振りのいい常連客馬淵 (段田安則)……いろいろとワケあり過ぎますね。 松也 稽古場では、パーツとパーツをみんなで繋げて、演じる僕らの方向性を固めていく、意思疎通と言いますか、それが少しずつ見えてきている気がします。お互いのお芝居を見て、こういうことか、自分はこう感じるんだ……と日々発見がたくさんあります。謎も矛盾も多い物語ですので、それをどう解消していくかをみんなでよく話し合っていますね。 ──公式YouTubeで稽古場の様子を拝見しますと、笑いもあって、いい空気感が。 松也 本当にいい空気感でお稽古させていただいています。いちばん最初のお稽古は探り探りでしたけどね。特に関西弁でのお芝居ということもあって、そちらに意識がいきがちで、どうしたものか、と。その後、聖子さんと段田さんお2人のお芝居を見て……勇気をいただきました(笑)。 ──どんな勇気を!? 松也 「いろいろと気にしなくていっかー!」って(笑)。段田さんの勢い、チャレンジ精神はその場を変えるんですよね。段田さんはもともと関西の方だけに、気にせず思い切り演じていらっしゃるわけですが、そのお姿を見て、僕もこうしたほうがいいよなぁって思ったんです。そう勇気づけられたあとは、とてもやりやすくなった気がします。 ──台本を拝見したところ、会話が面白くて、舞台上から言葉の数々を浴びるのが楽しみです。 松也 キャストそれぞれにメインとなるシーンがあって、僕はそこに常にいる感じにはなるのですが、トータルでは、いいチームプレイをお見せできると思いますね。 ──柳吉には、歌うシーンも!! 松也 はい、なぜかありますね(笑)。またこれからお稽古なのですが、とてつもなく突拍子もないという印象で……どうなるのでしょう(笑)。ですが、アングラ感がありそうで、僕はとっても好きですね。ミュージカルのように、理に適って入る歌ではなく、なんだこれは! なんで急に歌いだすんだ!?って。想像するに、ものすごく一定層にしか響かない(笑)。僕は、それがとても面白いなと。決して派手な作品ではないと思うのですが、いろいろ面白い要素があります。だいたい、時代設定自体が、“これはいったいいつなんだ?”ですしね。ほぼほぼ明治? 昭和初期!?ぐらいの雰囲気な人たちなのに、携帯電話やらエクセルがどうとか言い出して(笑)。 ──まさにそこにも“よくわからない”面白さが(笑)。 松也 ですので、時代背景に関しては無視してます(笑)。それよりも人としての中身を大事に作っていきたいですね。物語の筋、まとまりも含めて。 ──蝶子役の、瀧内公美さんについては? 松也 とても熱心に、ご自身のキャラクター性も深く考えながらお芝居される方だなと思っています。僕の場合は、深読みし過ぎると偏る傾向があるので、極力おおらかなところから始めるんです。ですが瀧内さんはさすが、映像の経験が豊富でいらっしゃるので、早い段階から考え、理解していく能力が優れていらっしゃるなと。 ──柳吉、蝶子でしか見られないであろう、お2人の表情を楽しみしたいと思います。 松也 蝶子と2人で、そして6人でしか出せない世界観をお見せしたいと思っていますので、ぜひ劇場で感じていただけたら嬉しいですね。 尾上松也(おのえ・まつや) 歌舞伎俳優。1985年、東京都出身。1990年5月、『伽羅先代萩』の鶴千代役にて二代目尾上松也の名で初舞台を踏む。歌舞伎のほかにも、NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』(2017年)『鎌倉殿の13人』(2022年)、ミュージカル『エリザベート』(2015年)、映画『ミステリと言う勿れ』(2023年)など幅広く活躍。父は六代目尾上松助。 BY JUNKO HORIE STYLED BY NORIMITSU SHIINA, HAIR & MAKEUP BY YASUNORI OKADA AT PATIONN ジャケット¥60,500(オーハル)・パンツ¥36,300(ア ノーベル デイ/ともにジョワイユ TEL. 03-4361-4464)、その他スタイリスト私物