職人ミュージシャンたちの旨味が凝縮されたスタッフの『スタッフ!!』
OKMusicで好評連載中の『これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!』のアーカイブス。今週はスタッフの『スタッフ!!』を紹介する。“よく歌い、よく跳ねる”、それがスタッフの音楽だ。有名無名を問わず、数え切れないほどのレコーディングセッションに参加した職人気質のミュージシャンたちが、シンガーを迎えずに自分たちの「歌心あるパフォーマンス」を披露するためにリリースしたアルバムが本作である。都会的で瀟洒なフュージョン作品が登場し始めた76年、南部のソウルやR&B、スワンプロックなどの作品を支えてきた彼らはデビューした。泥臭いグルーブ感と骨太のサウンドを武器に、インスト曲ではあるが、まるで歌っているかのような人間味あふれる演奏で聴く者を魅了した。21世紀に入って、多くのフュージョン作品が古臭くなっていくなか、本作は未だに新鮮な旨味に満ちていて、繰り返し聴きたくなる一枚である。 ※本稿は2019年に掲載
フュージョンのタイプ
そもそも、フュージョンといってもいくつかのタイプがあって、人によって好きなスタイルは異なる。ひとつは、ジャズをベースに訓練を積んだ超絶テクニックを聴かせるスタイル。ギターならジョン・マクラフリンやアル・ディメオラ、ベースならジャコ・パストリアスやスタンリー・クラーク、ドラムではビリー・コブハムやデイブ・ウェックル、キーボードならジョー・ザヴィヌルやジョージ・デュークといった超絶技巧を持ったアーティストたち。 もう一つは、ソウルやR&Bをベースにした強力なグルーブ感と「味」を感じさせるスタイル。ギターならコーネル・デュプリーやデヴィッド・T・ウォーカー、ベースではチャック・レイニーやゴードン・エドワーズ、ドラムではバーナード・パーディーやスティックス・フーパー、キーボードではリチャード・ティーやジョー・サンプルといった過不足のない技術(めちゃくちゃ上手くてツボを押さえた演奏)で勝負するアーティストたちがいる。