残業代ゼロに解雇規制の見直しなど議論……産業競争力会議とはどんな組織?
「残業代ゼロ」に「解雇規制の見直し」。そして「配偶者控除の縮小・廃止」に「米の生産調整の廃止」――。これらはみんな「産業競争力会議」という組織が提言、議論しているものです。さまざまな議論を呼んだ提言を行う産業競争力会議とは、いったいどのような組織で、なぜ注目を集めるのでしょうか。
「経済再生本部」の下部組織
産業力競争会議とは、安倍政権が成長戦略の策定や必要な改革の実現を目指して設置された「日本経済再生本部」の下にできた会議体です。内閣総理大臣を議長とし、関係省庁の大臣と企業経営者や有識者らの民間議員によって構成されています。 内閣総理大臣を議長としているとはいえ、「選挙の洗礼」を経ていない民間議員が多数いる会議に注目が集まっているのは、提言内容にインパクトがあるだけではなく、安倍政権の政策運営において、政府の政策決定権が強まっているという点もあげられます。政府の政策決定力が強く、与党の影響力が弱い政権について「政高党低」と表現されることがありますが、第二次安倍政権はその典型ともいえるでしょう。
「政高党低」の背景に自民の野党転落?
その要因は、3年におよんだ野党時代にあります。 野党に転落した2009年、自民党の議席は300から119に激減しました。この選挙で勝ち残った議員は実力や実績を持った議員といえるでしょう。野党時代の自民党を支えたのは彼らでした。中堅議員も多く、また議員数も少なかったため、当選回数3回から4回の議員にもシャドウ・キャビネット(SC)、党の部会や幹事会、総務会などでも一定のポストを与えられたのです。 そのうえで、谷垣禎一前総裁をはじめ、党内で役職を得た議員は全国を飛び回り、有権者との対話をおこなってきました(ふるさと対話プロジェクト)。それらを「ローカルマニフェスト」として各県版のマニフェスト作成に反映させたりしました。これらの過程で、各議員の政策立案能力も高まったといえるでしょう。現政権で入閣した議員の多くが野党時代にSC、党三役のポストを得ています(別表参照)。 このため党内の人材の厚みが薄まった感は否めません。自民党内で政策立案を担当する政務調査会には、財務省や農水省、国土交通省などの相当する部会がありますが、13ある各部会の部会長は当選2回が6人、3回が6人、4回が1人という割合です。