夫婦で絶叫「来た来た来た!」 戦力外回避も中日退団を確信…プロ人生“最後の望み”
中日で守備力は急成長「やればやるだけ本当に上手くなった」
ベッドのすぐ側に置いた携帯が鳴る。着信音に気づいた妻も駆けつけ、2人で顔を見合わせる。画面に表示された、知らぬ電話番号。疑いの余地はなかった。「来た来た来た!」。喜ぶでもなく、悲しむでもなく、純粋な驚きで夫婦で思わず絶叫した。球団関係者から「今からホテルに来られますか?」。すぐに着替え、名古屋市内の指定場所に向かった。 道中、移籍先について考えを巡らせた。11球団の補強ポイントを自分なりに考えた。結果はロッテ。佐々木朗希投手の米挑戦もあり、投手を指名すると思っていただけに予想外ではあったが、「迫力のある応援」と「ピンストライプかっこいいユニホーム」がすぐに思い浮かんだ。 年末年始は地元・山形での予定が詰まっているため、合間を見つけてマンション探しなどに奔走する。同時に、名古屋との別れの準備も進める。温かいファン、うまい名古屋めし。8年間で、得たものも多かった。「入団前から中日は練習量が多いイメージがあって、そのおかげで守備はやればやるだけ本当に上手くなった。練習量という部分はありがたかった」。投手と捕手以外、ほとんどのポジションも守った。 新天地でやるべきことはひとつ。「打たないといけない」。期待されて移籍することには変わりないが、何年も待ってもらえる立場でないのは変わらない。現役ドラフトで人生を変えた選手がいる反面、わずか1年でユニホームを脱がされる現実もある。 ラストチャンスに、全てを懸ける。「(細川は)移籍してきて、結果を残してすごいなと思っています。自分もそこを掴みにいきたい」。くすぶる現実を打ち破れるのは、自分のバット以外ない。
木村竜也 / Tatsuya Kimura