小型化した「Massive MIMO」のアンテナ

　スウェーデンの通信機器大手、エリクソンは20日、高速通信規格5Gを単独で利用できるスタンドアローン(5GSA)のネットワーク機能の強化に向けた新たなソフトウエアツールを発表した。拡大の一途をたどる通信需要に対応して処理能力を高めつつ、5Gの高速性や低遅延性を生かしたサービスを通信事業者に提供。クラウドゲームやビデオ会議、ライブ放送、車両の遠隔操作など導入事例の幅を広げるのが狙いだ。 　東京都港区内で同日開催したエリクソン・フォーラム2023で、エリクソン・ジャパンのルカ・オルシニ社長と野崎哲社長が5GSAを強化していく方針を発表した。 　新たなツールでは、5Gのネットワーク拡大に対応するため、基地局や端末に複数のアンテナを配置し、空間多重化を行う「Massive MIMO(マッシブマイモ)」や、ネットワークを分割することで用途やニーズに合わせたサービスを提供する技術「ネットワークスライシング」を活用したRAN スライシングなど5Gコアの機能を拡張。マッシブマイモの強化ではミッドバンド展開の容量を増やし、高負荷時のユーザースループットを最大10%向上させた。 　RANスライシングの進歩により、イベント向けや企業向けの展開を強化。異なるソフトやプログラム間でデータをやり取りするAPI連携も進めていく方針で、ルカ社長は「スライシングとネットワークAPIによる収益化を加速させていく」と強調した。 　低遅延機能も向上。アクセスが集中した際や劣悪な無線条件下でも品質を維持し、高負荷時の待機時間が最大90ミリ秒改善されたという。