【甲子園】合言葉は「文武不岐」強豪校を相手に結果を残す公立校・石橋
夏初出場で初戦突破
【第106回全国高等学校野球選手権大会】 2回戦 8月13日 第2試合 石橋(栃木)5-0聖和学園(宮城) 開場から100年の阪神甲子園球場。第106回大会の今夏は、公立校の活躍が目立っている。 全49代表校が出そろう大会7日目第2試合は、初出場校同士の対戦となった。センバツ21世紀枠で昨春の甲子園を経験している石橋高が聖和学園高を下した。 聖和学園高は宮城大会決勝で2022年の甲子園で東北勢初の全国制覇、23年の甲子園準優勝校・仙台育英高を下した私学の実力校だ。石橋高は栃木大会準決勝で昨秋の関東大会優勝、明治神宮大会準優勝で今春のセンバツに出場した作新学院高を撃破。決勝で国学院栃木高に勝利して、夏初出場を決めた。栃木県勢の公立校の出場は19年ぶり。石橋高は初めて勝利の校歌を2万1000人の観衆が見守る甲子園球場に響かせた。 学校創立100周年。グラウンドは共用で、進学校のため、平日の練習時間は2時間程度。一般的に見れば、ハンディに映るが、なぜ、強豪校を相手に結果を残せるのか。 「文武不岐」を合言葉にしている。「文武両道」とは違う。野球のレベルアップのために練習を重ねれば、勉強する体力がつき、勉強すれば、グラウンドでの集中力が身につく。平等に与えられている24時間の使い方を徹底してきた。塵も積もれば山となるのである。 石橋高・福田博之監督は常々言う。 「時間がない分、集中できる。それが強み。1球、1打席を大事にしようと言っています」 練習の質の高さが、実戦力につながっているのは言うまでもない。この日も、球際に強い好プレーが続出。4安打完封した背番号6の入江祥太(3年)は変化球を巧みに使い、毎回の11奪三振。頭脳的な投球が光った。福田監督が言う「身の丈に合った自分たちの野球」を、全員が貫いたのである。 今大会は旧制中学時代から全国舞台の経験がある掛川西高(掛川中)、大社高(杵築中、大社中)が見事な戦いで初戦突破を遂げた。伝統校が甲子園で勝ち上がる要因。石橋高・入江は試合中に足がつり複数回の治療を経て、最後までマウンドに立ち続けた。 「アルプスの声援に、力をもらった」 一塁側アルプス席は超満員。大声援が後押しとなった。石橋高、掛川西高、大社高に共通するのは長年の歴史から地域に根づき、愛される伝統校であること。今春から従来よりも「低反発」の金属バットに完全移行され、明らかに長打が減っている。個々の潜在能力を生かしたパワー野球よりも、組織力、細かい野球を追求する公立校にとって、新基準の金属バットは「追い風」となっているようだ。 夏の甲子園で公立勢が頂点に立ったのは、2007年の佐賀北高が最後である。アルプス席からの大声援も、貴重な戦力。2024年夏、公立校の躍進から目が離せない。
週刊ベースボール