トイレットペーパーは流さず、バナナを皮ごと…「認知症の母」自宅介護はもう限界
厚生労働省が発表している「介護保険事業状況報告」最新は令和4年度のものだが、要介護認定を受ける人は年々増加している。要介護認定者は前年比5万人増の694万人。介護サービスを受けているのは前年比10万人増の599万人だ。 【写真】台所がこんなことになっていた時も。そして警察沙汰も… 介護サービスにも様々な種類があるが、「施設に入所する」には、要介護認定やお金の問題も大きい。介護の制度もそんなに簡単ではない。 現在要介護2の母親と暮らしているライターの長谷川あやさんは、デイサービスやショートステイなどの介護サービスを利用しているが、母親を施設に預けるまでには至っていない。その現状は。
自宅で介護をするのはもう限界
今日も母は寝ている。この1年で寝ている時間が格段に増えた。自宅にいる時は、1日のうち20時間以上は寝ているんじゃないだろうか。起きていてもロクなことはしないので、寝ていてくれたほうがいい。昨日は、私が自分の部屋で仕事をしていると、リビングで寝ていたはずの母の姿が見えなくなった。あわてて外に出たら、マンションのドアの前で不安そうに佇み、「お迎えを待っているのになかなか来ない」と言う。いったいなんのお迎えなんだろうか。聞くと、「業者の人がくるんでしょ」。デイかショートの日と勘違いしているのかもしれない。日中、私が家にいるのに、出ていくパターンは初めてだった。 わかっている、自宅で介護するのはもう限界だ。すべてを投げ出したくなる衝動に幾度となくかられながら、なんとか自分を奮い立たせて生きている。生きがいは、愛犬と推し。仕事だろうとなんだろうと母をショートステイに預けて東京を離れることで気分転換を図っている。
母がおかしいと思ったのは2020年
母がおかしいと思ったのは、コロナ禍の2020年だった。一緒にいる時間が多くなり、「おかしい」ことに気づいた。食べ物をなんでもかんでも食べてしまう。「仕事で使うから、食べないでね」と伝えたものもの容赦なく食べる。私が怒ると、「絶対に食べてない。私が食べたという証拠はあるのか」と言い出す。おそらく本当に身に覚えがないのだろう。病院に連れていったところ、軽度の認知症と診断を受け、2021年春には要介護1、2024年には要介護2の認定を受けた。今は要介護3くらいなんじゃないだろうか。以来、症状の進行を遅らせるという薬は飲んでいるが、症状は悪化の一途だ。飲まなきゃもっと早く進行していたのかと思うと恐ろしい。 殺せるものなら殺したいと思ったことは一度や二度じゃない。「世の中にはもっと大変な状況の人もいるのに」と思うかもしれないが、そんなことは百も承知だ。人と比較したって、仕方ない。 意思の疎通が取れない、寝たきりの母親を親を持つ友人は、「自分で食事ができて話せるだけでうらやましい」という。その通りだと思う。父は1年半の昏睡状態を経て他界した。問題はあるにせよ、母は自分でモノを食べられる(バナナの皮をむかずに食べようとしたり、櫛でごはんを食べようとしたり、なかなかシュールではあるが)。足腰はまだ健康で自分で動くこともできる。トイレも自分で行く。用は足せても流せないし、使ったトイレットペーパーを便器に入れることができず、使用後の紙はどこかしらに置かれているなど、突っ込みどころは多いとはいえ、母は自分で食べ、自分でトイレに行く。
