東京への人口移動で起きた男女比逆転―高学歴化する女性の就業と居住地選択
女性の大学進学と進学移動
人口移動は10歳代後半から30歳前後にかけて多く発生する人口現象であり、特に若い世代の人口移動は進学、就職を目的としたものが多いという特徴があります。最近の女性の人口移動と関連しているものとして、大学進学を取り上げてみましょう。 学校基本調査によると4年制大学への進学率(浪人を含む)は1954年では男13.3%、女2.4%でした。それがバブル経済期の1985年には男38.6%、女13.7%となり、2017年には男55.9%、女49.1%にまで上昇しています。全体として大学進学率が上昇するとともに、その男女差は約60年間でかなり縮小しました。今は男女とも概ね半分が大学進学をする時代になっています。 大学は都市的な地域に多く立地していますから、大学進学率が高くなることで人口移動は活発になるはずです。果たして女性の大学進学率の上昇は、東京圏外から東京圏への人口移動につながっているのでしょうか。 学校基本調査では、出身高校の所在県と進学先大学・短大の所在県の別に入学者数がクロス集計表で公表されています。入学者数は進学者数とみてよいものですから、高校と大学・短大の所在県の関係を進学移動として捉えてみましょう。 女性について、東京圏と東京圏外の2地域、大学と短大の2分類で進学者数をまとめたものを図2に示しています。1974年から2016年にかけて最も大きく増加したのは、東京圏外の高校から東京圏外の大学への進学(「大学(東京圏外→東京圏外)」)です。1980年代半ばまではあまり変化がありませんでしたが、それ以降は急激に増加し、30年間で約10万人増加しました。 次に増加が大きいのは東京圏の高校から東京圏の大学への進学(「大学(東京圏→東京圏)」)で、40年かけて緩やかに増加し、2万人程度から6万人へとおよそ3倍になっています。「大学(東京圏外→東京圏)」が大学進学に伴う東京圏外から東京圏への人口移動を表すものになりますが、ここまで見た2つのカテゴリーに比べると増加量はそれほど多くありません。1980年代半ばまでは2万人程度で推移し、その後増加して2000年頃には4万人弱に達しますが、その後はほとんど変化していないことがわかります。 女性の大学進学率は大きく上昇しましたが、その多くは東京圏、東京圏外というそれぞれの地域内での進学であることがわかります。もちろん、この地域分類はかなり広い範囲ですから、その中での進学移動は起こっているでしょう。ですが、女性の大学進学者の増加が直ちに女性の東京圏外から東京圏への人口移動に結びついているというわけではなさそうです。また、「大学(東京圏→東京圏外)」はほとんどゼロ人である状態が続いており、東京圏出身女性が東京圏外の大学に進学することは非常に稀であるということも注目すべき点でしょう。 大学進学と比べると、短大進学はいずれの分類でも大きく減少しています。特に大きく減少しているのは東京圏外での短大進学(「短大(東京圏外→東京圏外)」です。1980年代半ばから増加しましたが、1993年の16.7万人をピークに減少に転じ2016年には4万人となりました。 東京圏内での短大進学(「短大(東京圏→東京圏)」)も1990年代半ばから減少に転じていますし、東京圏外から東京圏への短大進学(短大「東京圏外→東京圏」)も1990年代の終わり頃から減少し始め、最近ではほとんどゼロ人になっています。女性にとっては短大進学と大学進学が代替するものであったと言えます。また、大学進学と同様、東京圏出身女性の東京圏外への短大進学(短大「東京圏→東京圏外」)も約40年に渡ってほとんどゼロ人でした。 過去の短大進学の多くは地元短大への進学であり、それによって長距離の人口移動が発生することは稀でした。それが女性も短大ではなく4年制大学へ進学する傾向を強めたことにより、進学移動が長距離化したものと推察されます。しかし、そうした変化が東京圏外から東京圏への女性の人口移動を増加させる主たる要因であったとは言い切れない。そういったことが図2からは読み取れます。