「即刻工事を中止して!」 リニア工事で水枯れが発生した岐阜県瑞浪市 今までは静岡は他人事だったが…
「即刻工事を中止して!」
リニア新幹線のトンネル工事で水枯れが発生した岐阜県。静岡朝日テレビのカメラが現地に入りました。 JR東海 丹羽俊介社長: 「周辺で本工事以外に地下水に影響するような工事が行われていないことから、本工事による影響の可能性が高いと考えているところ」 岐阜県で進められている、リニアのトンネル工事。周辺地域では今、井戸や、水源が枯れてしまう事態が起きているといいます。 静岡朝日テレビのカメラはその現場である岐阜県瑞浪市(みずなみし)大湫町(おおくてちょう)へ。この町は、人口およそ300人の、のどかな集落です。古くは、江戸と京都を結ぶ「中山道(なかせんどう)」の宿場町として栄えました。それが令和になり、東京と愛知を結ぶリニアの沿線自治体になろうとしています。ところが…。 石上雄基ディレクター: 「リニア新幹線のトンネルは、いま私が立っている場所の真下に計画されています。カメラから向かって左側が品川方面、向かって右側が名古屋方面です。まだこの真下では掘削工事は始まっていませんが、すでに水源や井戸などに影響が出ているといいます。」 静岡県内では以前から懸念されていた“水問題”。実際、岐阜県瑞浪市の住民が実感することとなりました。 岐阜県瑞浪市大湫町の住民: 「身近に水の問題が迫ってくると、やっぱり心配です。」 岐阜県瑞浪市大湫町の住民: 「即刻工事を中止して、原因を調べるというのが、第一ではないかと思っています。」 枯れてしまったという井戸を見せてもらいました。 大湫町区長会 纐纈会長: 「あそこに見えるのが天王様の井戸と言いまして、枯れたことがないという井戸になります。」 Q:枯れたことがない?底が見えていますね? 「ひび割れがあるかと思います」 Q:通常はどのくらいまで水がある? 「ちょうど色が違っているところ。線になったようなところまで。4月に入ってから徐々に少なくなったという話を聞いております。」 瑞浪市を横断する、リニア新幹線の「日吉トンネル」。このトンネルは、2018年から掘削工事が始まりました。JR東海によりますと、2023年12月と2024年2月、工事中にトンネル内で湧水を確認。2023年12月の湧水は、多い時で毎秒40L。2024年2月の湧水は、毎秒20Lだということです。 さらに地上では、2月下旬、観測用の井戸の水位が下がっていることが分かりました。 石上雄基ディレクター: 「こちら、道路沿いにある池なのですが、現在の水深は10cmから20cmほどです。ただ、近所に住む方の話によりますと、3日ほど前までは、まったく水がない状態が続いていたということです。それを示すかのように、池の底には大きなひびが入っているのが分かります。」 住民(女性 60代): 「いつもはもうちょっと…、あの葉っぱの半分ぐらいまで(水が)あるはずです。カラカラになっちゃって、ホントに水がなくなっちゃいましたね。水はね、一番大事なので、その辺を何とか、確保というか、井戸がカラカラになった方も見えるので、その辺を何とかしてほしいですね」 JR東海が周辺の調査を行ったところ、32カ所の水源や井戸のうち、半数近い14カ所で、水位の低下が確認されたということです。中には、「簡易水道」の水源が、完全に枯れてしまった場所も含まれています。 このため、JR東海は、住民説明会を開き、井戸が枯れてしまった住宅には、上水道を接続する工事、水源が枯れてしまった場所では、新たな井戸を掘る工事を、JR東海の負担で実施することなどを説明しました。 大湫町区長会 纐纈(こうけつ)富久会長: 「区民から私も含めて『工事を中止しろ』『新たな代替の水源地を確保しろ』という2点を申し込みました。水というのは、ライフライン上、もっとも大事なものになりますので、やはり、そういうものを、しっかりと確保した上で、工事を進めるというのは、非常に大切かなというふうに思っております。」 事態を受け、JR東海は5月20日から瑞浪市大湫町で新しい井戸の設置工事を始めました。20日は木の伐採などが行われ、今後、本格的な井戸の掘削工事に入ります。 これから田植えシーズンを迎える中、今回の水枯れは農家にも不安を広げています。 住民(農家男性 40代): 「例年と比べると、少し水の持ちが、少し引くのが早いといいますか、水が少なくなっていくスピードが例年に比べて気持ち早いような感覚はありますね。まだこの田んぼの真下まで来てるわけじゃないので、この下を通過した時に、またひどくなるんじゃないかなっていう心配がありますね。」 日吉トンネルは、この水田の、およそ140メートル下を通る計画です。取材したこの日、水田の水位を測るための井戸を、設置する工事が行なわれていました。 住民(農業男性 40代): 「補償の問題で、どこかに水源を設けていただくとか、下の川の方から農業用水を引いてもらうとか、そういうことで水を確保するっていうことは、できたとしても/水の持ちが悪くなって、すぐに水が引いてしまうような田んぼになってしまった場合/お米を作ることはできても、品質ですとか、収量に関して、今までのものが維持できるかどうかっていうと、ちょっと今まで通りにはいかないんじゃないかなという気はします」 また、古くからこの地域に住む女性は、大湫(おおくて)地域が、水に関して、苦労してきたことを話してくれました。 住民(女性 70代) 「母たちは、バケツでお水をくんで、おうちの中の水槽とかに入れてたっていう時代がずっと続いてたんです。それを父たちが/水道引こうかっていう相談を持ち上げたっていう、その世代の人たちが立ち上がって、やっと水道管を引いてもらって、(簡易水道を)供給してくださるようになったんです。」 この地域では、50年ほど前に「簡易水道」の組合をつくり、およそ35軒が、利用しています。2024年2月に枯れてしまった水源は、2カ所ある「簡易水道」の水源うちの1カ所だと言います。 住民(女性 70代): 「水に対しては安心して生活できようになった矢先に、こんなことが起こって、本当に悲しいっていうか、残念だなと思います。水の大切さを大湫の人は、みんな思ってるから、今すごく『どん底』に居るんじゃないかなと思っています。蛇口をひねれば出るっていう生活の経験が少ないので」