【遠藤航・分析コラム】見抜かれた弱点とは? 致命的なミス、前半のみで交代。狙われたアンカーの隙
プレミアリーグ第16節、クリスタル・パレス対リバプールが現地時間9日に行われ、1-2でアウェイチームが勝利している。アレクシス・マック・アリスターの欠場に伴い、先発に抜擢された遠藤航だったが、前半のみで交代に。その理由は彼が抱える「課題」にあった。(文:安洋一郎) 【動画】クリスタル・パレス対リバプール ハイライト
●リバプールが劇的な逆転勝利 リバプールが強い理由がよくわかる試合展開だった。 ユルゲン・クロップ監督のチームからすると先制を許す苦しい展開となったが、75分にクリスタル・パレスのジョーダン・アユーが退場すると一気に風向きが変わる。直後の76分にモハメド・サラーのゴールで追いつき、91分にハーヴェイ・エリオットのゴールで逆転に成功した。 データサイト『Opta』によると、リバプールはプレミアリーグでアディショナルタイムに通算43ゴールを決めており、これは歴代最多の記録だそうだ。まさにクラブの真骨頂である終盤の勝負強さが発揮されたゲームだったと言えるだろう。 結果的に勝利をしたとはいえ、内容面では物足りなかった。先述した通り、風向きが変わったのは相手に退場者が出て以降で、それ以前の戦いぶりは微妙だった。クロップ監督も試合後の『TNT Sports』のインタビューで「(同点ゴールを決めるまでの)76分間は本当にひどい試合だった」と苦戦したことを認めている。 その一因となってしまったのが、怪我で今節を欠場したアレクシス・マック・アリスターに代わってアンカーで先発起用された遠藤航の保持面でのクオリティ不足だった。 なぜ、日本代表MFは苦しいパフォーマンスに終わった上で、前半のみで交代となってしまったのだろうか。 ●遠藤航が前半のみで交代となった理由 苦しんだ要因は、クリスタル・パレスMFウィル・ヒューズが遠藤の監視役となり、タイトなマンマーク戦術を行っていたことにある。 ヒューズはリバプールの最終ラインがボールを持った際に遠藤のすぐ後ろにポジションを取っており、パスが入った瞬間に激しく寄せて“前を向かせないための”タイトな守備を実行していた。 仮にマック・アリスターがアンカーで先発出場していればこのマンマーク戦術は行わなかっただろう。このアルゼンチン代表MFは食いついてきた相手の逆を突く動きが上手く、個人スキルでプレッシャーを回避できる。 一方の遠藤はマック・アリスターと比較をするとプレス回避能力が劣る。ボールを受けた瞬間にダイレクト、もしくはワンタッチで味方選手にスムーズな展開ができればビルドアップの逃げどころとなるのだが、“いつ”“誰に”パスを出すかという「判断力」がこの試合では鈍かった。 その代表例があわやPKを献上しかけた29分でのボールロストだ。CBのジャレル・クアンサからのパスを遠藤は後ろ向きで受けたが、その直後に背後からヒューズが激しくチャージ。結果的にはここの接触がOFR(オン・フィールド・レビュー)の末にファウルとなったが、遠藤のロストからショートカウンターを食らって、一度はPKの判定が下された。 この場面で遠藤は致命的な判断ミスを犯している。パスを出した瞬間、すぐにクアンサはジェスチャーでダイレクトに繋ぐように指示。しかし、日本代表MFは一度コントロールしてから展開しようとしており、余計なワンタッチが増えたことで、相手に寄せられる時間を与えてしまった。 ●「対遠藤対策」で明らかとなった課題 試合開始直後の3分にみせたトレント・アレクサンダー=アーノルドへのパスの展開など、前向きでボールを受けた際にはクオリティを発揮していたが、29分のように後ろ向きで受けたときの判断の遅さは課題と言えるだろう。 これが遠藤の課題だと間接的に伝わったのが、後半からのヒューズの立ち位置とプレスのかけ方だ。 ハーフラインが明けると同時にリバプールは遠藤に代わってジョー・ゴメスを投入。右SBのアレクサンダー=アーノルドをアンカーの位置に移した。すると、ヒューズはイングランド代表DFに対して遠藤のようなマンマーク戦術をとることなく、より低い位置にポジションを取って構えていた。 要するにアンカーへのマンマーク戦術は「対遠藤」専用のものであり、クリスタル・パレスは日本代表MFの弱点を見抜いていたことになる。遠藤のところをボールの奪いどころと設定していたことが、PK奪取未遂の場面や他のカウンターのシーンなど、前半のビッグチャンス演出に直結しており、ホームチームの狙いは見事に当たっていた。 後の対戦相手は「対遠藤対策」がハマったこの試合をしっかりとチェックをしているだろう。となれば、遠藤は今後も相手にマンマークされて前を向かせてもらえないという試合が増えそうだ。 場所的にも大事に繋ぎたい遠藤の気持ちはわかるが、出足の鋭い選手が多いプレミアリーグではワンタッチの多さが致命的なロストに繋がってしまう。この部分はトレーニングの積み重ねと強度に慣れるしかない。 守備面や前を向いた際のクオリティは徐々に上がっているだけに、この課題を解決することができるかどうかが、今後の遠藤の序列に大きく影響を及ぼしそうだ。 【了】
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