【NBA Rakuten解説者インタビュー】宮田知己さん 「NBAの“常識を超えた部分”を味わってほしい」
2024-25シーズンの開幕を記念して、「NBA Rakuten」の解説でもお馴染みの宮田知己さんにインタビュー。宮田さんが注目するチームや選手、河村勇輝と八村塁について語ってもらった。※インタビューは11月1日の解説後に実施。
河村選手の謙虚な一面からは学ぶことがたくさんある
――メンフィス・グリズリーズでNBAデビューを果たした河村勇輝選手について、現時点での印象を教えてください。 宮田:アシストは間違いなくNBAでも武器になっています。ただプレシーズンではいいパスが通っていたのにレギュラーシーズンでそうしたシーンが減っているのは、まだスコアリング面で相手の脅威になれていないから。「フリーにしてはいけない」と相手からのリスペクトを得ることが大事です。それによってディフェンスを引き寄せ、結果いいパスが出せる。自分のシュート力を見せつけて相手にリスペクトを抱かせるか、ここが今の課題だと思います。 ただ、日本代表やBリーグでプレイしていた時から、河村選手はアシストで注目されると同時に得点も決めていました。プルアップスリーも得意な方です。今は短いプレイタイムで結果を残すという慣れない状況にアジャストしていくことが求められているのでしょうね。 ――現役選手では最小の172cm。ディフェンス面は? 宮田:フィジカル面で心配した人もいると思いますが、僕はそんなことはないと考えています。これまでNBAを目指すうえでフィジカルの強化をしてきたでしょうし、今のところ当たり負けしている場面はあまり見受けられないです。もちろんビッグマン相手は別ですが、同じポジション同士で当たり負け、というのは少ないでしょうね。 ただ身長差によるミスマッチを突かれてしまう場面はどうしてもあって。最後シュートチェックに行っても、相手としてはジャンプしてしまえば実質オープンみたいな状況を作れています。なので、オールコートで足を使った守りというのが求められていきそうです。 ――代表では河村選手と接する機会もあったと思います。 宮田:代表合宿中、サポートで入っている時も必ず挨拶をしてくれました。彼の方が年下とはいえ代表歴やプロ歴は彼の方が上ですし、とてもリスペクトしています。そんな彼の謙虚な一面からは学ぶことがたくさんあります。 僕が初めてA代表の試合に帯同した時も、試合終了後に僕の所にまで来て挨拶してくれたんです。帯同間もない僕にもわざわざ歩み寄って「ありがとうございました」って。そうした人柄が選手である前に、1人の人間として彼が輝く理由ですよね。 ――今はGリーグのキャンプやグリズリーズへの帯同と大変な時期だと思います。 宮田:僕が最近一番好きな言葉である「No Risk, No Story」は、リスクのないものに物語は生まれないというような意味なんですけど、まさに河村選手がそうだなって。Bリーグにいればこの先ずっとプレイタイムが保証されていたと思うんです。それでもリスクを取り、想像できないような世界に飛び込んだ。だからこそ、今こうして新しい方々にNBAやバスケットボールが届いていたり、彼自身の新しい人生の歩みがあったり、そして僕らも彼の挑戦を楽しませてもらっている。これらは彼がリスクを取ったからこそ生まれた物語。想像もできないような困難とか苦しさの中で仕事をするのは本当に大変なことですが、それすら楽しめているんじゃないですかね。