「時代とともに重荷になっていた・・・」お花見での余興や料理の準備 キッチンカー”動員”、100年続いた慣習を辞めた地域の挑戦
準備に追われる住民たち
長野県茅野市北山の糸萱(いとかや)区は28日、区民らが楽しむ「糸萱さくら祭り」を区民会館周辺で初めて開く。同区で毎年4月下旬に100年余にわたり「公園祭」を開いてきたが、毎回準備に追われる区民がいた。今回はキッチンカーを招くなど負担軽減を図り「全員が楽しめるように」と工夫。移住者が多い近隣地区の自治会役員も新たに招くことで、互いに顔が見える関係づくりをして地域防災力の強化にもつなげたい考えだ。 【写真】新たなイベントにすることを決めた区長たち
一芸を披露したり、家から一品ずつ料理を持ち寄っていたりしていたが…
区民会館周辺にはタカトオコヒガンザクラが植わる公園がある。糸萱区誌によると、公園祭は1911(明治44)年に始まり、毎年4月下旬に実施。「大人は桜の下でござを敷いて酒を楽しみ、子どもは出店やおもちゃで遊ぶ日だった」と区長の篠原弘さん(67)は振り返る。区民が一芸を披露する余興もあったが「時代とともに重荷になっていた。女性が家から一品ずつ料理を持ち寄るなどの負担もあった」と副区長の島立正広さん(66)は言う。
企画内容を改めることに キッチンカーの活用
新型コロナウイルス感染拡大の影響で5年ぶりの開催となったこともあり、今回から企画内容を改めることにした。キッチンカーで使える3千円分の無料券を全区民に配布する計画。催しも区民による一芸はやめて、地元の太鼓団体や中学校吹奏楽部、ウクレレの演奏などを行う。区民が一緒に楽しめるようにした。
糸萱区の北側にある蓼科中央高原は、移住者が中心。糸萱区民会館はその自治会の人々の避難場所にもなっているが「(両地区の間で)子育て世代同士は交流があるが、他はつながりが少ない」と篠原さんは懸念。万一に備えた日頃からの付き合いが重要―として、自治会役員も祭りに招待する予定だ。
一方で、蓼科中央高原に住む人々から「野沢菜漬けなど郷土料理を糸萱の人から教わりたいとの声も聞く」と島立さん。「交流が自分たちの住んでいる所の良さの再発見にもつながる」と期待する。篠原さんは「『みんなで楽しもう』というコンセプト。負担を抑えつつ、若い世代を中心に、地区の団結心を育む場にできればいい」と思い描いている。28日は午前11時から。