大部屋に8日間入院で“請求額50万円”…乳がん罹患の年収450万円・40歳女性「病院食に1回460円は高い…」【CFPが解説】
初めて知った「高額療養費」の存在
「入院中は1泊何万円もする高額な個室に入っていたのですか?」FPから問われた水谷さん。「なぜ?」と思いながらも入院は大部屋だったため、個室代はかからなかったと回答しました。 するとFPからはさらなる質問が「高額療養費は申請しましたか?」。「なんですかそれ?」思わず聞き返した水谷さん。 ちょうど手元の資料に病院の領収書があったため、それをFPに見せたところ、FPからは想定外の言葉が「水谷さん、今からでも高額療養費を申請すれば約40万円のキャッシュバックを受けることができます」。 まさかの案内に驚きながらも、水谷さんは、FPからその『高額療養費』というものの詳細を教えてもらいました。後日、市役所へ行って教えてもらったとおり手続きを完了させました。入金までには少し時間がかかるもののFPがいったとおり、退院時に支払った入院療費自己負担額のうち約40万円のお金が戻ってくるようです。 ひととおり手続きを済ませ冷静になった水谷さん。資産運用の相談でこんなことまで教えてくれたFPに感謝するとともに、無知であることがとても怖いことだということを実感しました。
がん保険より先に必ず知るべき「高額療養費」
一般的に30代、40代と年代があがってくると生活習慣病などへの不安が出てくるといわれています。がんもその生活習慣病のひとつとされ、そういった年代でがん保険を考えたいという人も少なくありません。 実際生命保険文化センターの調査によると、がん保険の加入率が一番高いのは40代ということです。がんのリスクが気になると、がんへの備えとしてがん保険に加入しようというアクションをとるかもしれませんが、民間の保険加入を考える前に、「すでに得られている保障」について正しく理解することが非常に大切です。 使うと実感するとても手厚い保障 高額療養費は健康保険制度のなかのひとつの保障で、健康保険証を持っていれば誰でも必要なときに申請し、保障が得られます。その中身は厚生労働省によると、 高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払った額(※)が、ひと月(月の初めから終わりまで)で上限額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です。 ※入院時の食費負担や差額ベッド代等は含みません。 とされています。つまり、ひと月当たりに負担すべき医療費の自己負担額には上限が定められていて、その限度額を超えた場合にはその金額がキャッシュバックされるという制度です。一般的に入院・手術という流れになると、その限度額以上の医療費が発生するため、手続きをすることでキャッシュバックを受けることができます。 特にけがや病気の種類を問わないのですが、がんのように手術が高度なものとなり、医療費が高額になるケースほどキャッシュバック額も大きくなり、ありがたみも増してくる設計になっています。がんという重い病気でも、現在は早期で発見できれば、短期間の入院手術で治療が終了となることも少なくありません。 もし今回の事例の水谷さんのようなシナリオであれば、がん治療費は約10万円ですんでしまい、必ずしもがん保険が必要とはいえないかもしれません。 もちろん、がんは再発転移などで治療が長期化することもあり得ますから、そういったシナリオ、また手元の貯蓄のゆとりなどもふまえて総合的に判断する必要はありますが、この高額療養費は必ず押さえてこの保障では足りないところを民間の医療保険・がん保険でカバーするという考え方が無駄のない保険の組み方といえるかもしれません。