自由が丘も代官山も上位から陥落…「住みたい街ランキング」から見る現代人の"家探しの最優先事項"
■首都圏の平均通勤時間は片道50分程度 たしかに駅まで歩いて行けることの利便性は重要な指標であるが、その指標のみで快適に暮らせるという保証にはならない。駅という物理的な存在を絶対視する価値観は、まさに「通勤距離」という価値尺度が圧倒的に優先される日本社会の構図から生まれている。 ちなみに、総務省「平成28年社会生活基本調査」によれば、通勤時間が長時間におよぶ都道府県別ランキングとして、1位の神奈川県で1時間45分、2位の千葉県で1時間42分、3位の埼玉県で1時間36分、4位の東京都で1時間34分と、上位を首都圏の各都県が独占している。このデータは往復時間なので、片道に換算すれば毎日の生活時間のうち、片道50分程度を通勤に割くのが標準的ということになる。 近年の「都心居住人気」を表す傾向は、様々なデータからも見て取れる。 毎年メディアの注目を集める住宅ランキングに、リクルート社が発表する「SUUMO住みたい街ランキング」がある。 ■本当に新宿駅や東京駅近くに住みたいか? 本書執筆時点での最新版である2024年のデータを見てみよう。これは2023年11月13日から23日の11日間で、首都圏(1都3県)に茨城県を含むエリアの20歳から49歳の男女9335名に、住んでみたい街を最寄りの駅名から選んでもらったインターネット調査を基にしている。〈図表1〉 その発表によると、上位10位まではいずれもJR主要幹線の駅にある街が選ばれた。都心居住への憧れを示すこの傾向は近年顕著であるが、新宿(5位)、池袋(7位)、品川(8位)、東京(9位)、渋谷(11位)といった山手線の主要駅名が上位に並ぶにいたっては、違和感を覚える読者も多いだろう。 これらの駅からアクセスできる住宅がないことはないが、たとえば1位になっているJR横浜駅を選ぶ回答者は、横浜のイメージとしてみなとみらい周辺や山下公園、山手町付近など、いろいろな情景を思い浮かべて投票しているように思える。 それに比べて、東京駅に徒歩でアクセスできる住宅などは、単なる憧れどころか、冗談に近いレベルで投票しているのではないかと疑ってさえしてしまう。こうした調査はとかく、人気投票である側面が強いうえに、調査会社の住宅販売政策上の意向が込められたものになりがちだ。