’19日章学園/2 攻守 敗戦糧に磨いた強打 /宮崎
<第91回選抜高校野球> 昨秋の九州大会初戦。日章学園の選手らは「最速145キロ右腕」と評判の九国大付(福岡)、下村海翔投手(2年)を初回から攻めて二回までに6得点。最終的に11安打を浴びせて7点を奪い、優勝候補の一角を崩した。 猛攻の陰には1人の好投手の存在があった。「おととしから『戸郷、戸郷』と言って練習してきましたからね」。畑尾大輔監督(48)は目を細める。 「戸郷」とは聖心ウルスラ学園高校(宮崎県延岡市)の本格派投手として鳴らし、昨年のドラフト会議で巨人に6位指名された戸郷翔征投手。2017年夏の宮崎大会3回戦で対戦し、16三振を喫して敗れた。「直球とスライダーの見分けがつかず、ただバットを振るしかなかった」。当時1年生で出場していた平野大和選手(2年)はそう振り返る。 その日以降、日章は打撃練習の時に投手を1メートル手前から投げさせ、140キロ超の速球にも力負けしないスイングと低めのボール球を見極める選球眼に磨きをかけてきた。「この練習のお陰で球が速い強豪校の投手も打てるようになった」と森永光洋選手(2年)。 昨夏の宮崎大会準々決勝ではその戸郷投手を打ち崩して聖心ウルスラに雪辱。決勝で日南学園に敗れたが金子大輝選手(2年)のランニング本塁打や森永選手、深草駿哉選手(2年)の適時打などで8点を奪い、今日の強打の片りんを見せた。 その強打に目を奪われがちだが、日章学園は守備も堅かった。昨秋の宮崎大会と九州大会の計8試合で失策はわずか4。打たせて取るタイプの石嶋留衣、寺原亜錬両投手(ともに2年)をもり立て、4-10で敗れた九州大会準決勝の明豊(大分)戦を除けば1試合平均失点を1・8点に抑えて勝ち上がった。 堅守は練習中も常に緊張感を絶やさない工夫から生まれた。日章はノックなどで誰か1人でも守りのミスをしたら全体の練習を止め、全員でその選手に次のプレーのアドバイスを送る。「もっと声を出して」「次は1歩目を意識していこう」 選手は日ごろから互いのプレーに目を凝らす。だからミスが出ればその原因を的確に指摘できるし、互いに「見られている」緊張感にもつながる。「お陰で試合の緊張感の中でもミスしなくなってきた」。森永選手はそう手応えを話す。 水はけが悪く整備が難しいグラウンドも堅守の「生みの親」だ。一度雨が降れば乾くまで日々状態が変わるため「その日の状態に合わせて、打球にどう向かっていくか考えながら守るのが習慣になっている。その分、きれいに整ったよそのグラウンドでは思い切ったプレーができる」と福山凜主将(2年)。 日本一といわれる甲子園のグラウンドで堅い守りを披露できる日を心待ちにしている。