実は天井が低くて狭い…京大教授の建築家が考えるフランク・ロイド・ライトの建築が日本人受けする理由
フランク・ロイド・ライトの建築はほとんど訪れているという建築家の岸 和郎さん。しかしながら敬愛というよりは、どちらかといえば分析すべき興味深い対象として一生懸命に見ていたそうです。建築のプロフェッショナルからライト建築を見たとき、フランク・ロイド・ライトという建築家は、「やりたいこと、やりたかったことがわかる気がする」のだといいます。その「わかる」部分こそ、これから訪れる「わからない」人たちにとってのチェックポイントになるはずです。 【写真集】売り出し中のフランク・ロイド・ライト設計住宅2軒
1.「帝国ホテル・ライト館」で知る、極めてライト的な演出プラン
帝国ホテル・ライト館は現在、博物館明治村(愛知県犬山市)に一部が移築され現存しています。岸さんにとっては、建築が切り取られて部分的に残っている状況が痛々しくて辛く感じるといいます。しかし同時に、一部でも体験できるのはよいことだとも思うそうです。実際、そのおかげで私たちはライト建築のとてもおもしろい特徴を知ることができます。 「帝国ホテルは、シンメトリーの立面です。シンメトリーの立面の建築というのは、ヨーロッパの古い教会や美術館など、真ん中からまっすぐ建物に入るようにつくられるものなのです。 しかも階段を上がる。それがマストなのですが、ライトは何をしたかというと、ど真ん中に池を置いて、正面から建物のなかへ行けないようにしたんです。日本は左側通行ですから、車は建物の左側から回り込み、建物を斜めに見せて、それからエントランスへ入っていく。ライトがシンメトリーを扱うときは、単純にシンメトリーだから中央から入るということをほとんどしていないはずです。そういうある種のライトらしい演出プランが透けて見えてくる。そこがすごく傲慢な言い方をすると『先生、あなたのやりたいことわかるよ』と言いたくなるんです。生意気ですよね(笑)。でもライトの建築がおもしろいのは、元来の建築形式がもっているものを素直に体験させないところ。このように絶対に直球ではない、ライト的な演出があるところが見どころです」