【国立大の学費問題】東大生の親の4割が該当の「年収1000万円」は“裕福”と言えるのか
すべて公立・国立でも1000万円超
最大の要因の一つが増税と社会保険料の引き上げだ。この20年あまりで、年収1000万~1250万円世帯の負担額は年間約165万円から約225万円へ増加した。手取り収入が60万円減ったということだ。これだけ見ても、昔の年収1000万円と、いまの年収1000万円では、実質が全く違うということがお分かりいただけるだろう。 教育費の負担も増している。現在の学費の平均額を幼稚園から大学まで通じてみると、すべて公立・国立に通った場合でも子ども1人あたり1000万円を超える〈図1〉。これは文部科学省など公的な全国データを基に計算したものだが、このデータの3年前と比べても30万円以上高くなっている。 大学の授業料は国立大でも50年で15倍も上がり、今では在学費用は4年間で約500万円かかる。私大なら文系で約700万円、理系なら800万円超にもなる。子育て費用の中でも大学進学の負担は、かねてより特に重いといわれてきた。しかしそのスケールはここ30年で格段に上がっている。子どもの大学進学により家計が赤字転落する家庭も珍しくない。 もっとも、大都市圏などでは高校までの教育費も高くなりがちだ。首都圏の中学受験者数は少子化にもかかわらず過去最高を更新し続けており、受験本番を迎える1月中旬から2月にかけては、SNSで「#中学受験」がトレンド入りするのがいまや毎年の風物詩だ。 当然ながら塾代の負担は重くのしかかる。目安としては小学4年生ごろから6年生までの約3年間で、平均総額200万円前後とされているが、メインの学習塾と並行して苦手分野克服のための個別指導や家庭教師を利用することで、それ以上になる家庭もある。わが子の志望校への合格可能性を1%でも上げたいという親心が高じた結果、「課金ゲーム」のような状況が作り出されているのだろう。
家計がほぼ確実に破綻
受験戦争の激化に呼応するように受験対策の低年齢化も進んでいる。都心部などでは小学1年生から年間数十万円の塾代をかけているケースもままあるのが実情だ。 加えて私立中学の学費も値上げが相次いでいる。都内私立中で1年生時にかかる入学金と授業料の平均額は来年度、史上初の100万円超えを記録する見通しだ。 こうした事情に適応しながら子育てをするのは、年収1000万円世帯にとっても至難の業だ。それを確かめるべく、筆者は東京23区に住む夫婦と子ども2人からなる4人家族の世帯年収が1000万円だと仮定し、4歳差の子ども2人が中学受験を経て私立中高に進む場合の家計収支を、23区内の平均的な生活費や住居費を前提にシミュレーションした。