『スプラ3』シオカラーズ、テンタクルズ、すりみ連合が集結 過去、現在、未来まで愛される音楽世界に迫る
“古いけれど新しい”カオスなポップサウンドを繰り広げるすりみ連合
そして、2作目から約5年を経てリリースされた、現時点でのシリーズ最新作『スプラトゥーン3』(2022年)から登場したのが、フウカ、ウツホ、マンタローというヤンチャな悪童3人組で構成された音楽ユニット、すりみ連合である。こちらもカウンターのカウンターということで、2人組の正統派アイドル、1MC+1DJ&ボーカルの現代的なヒップホップユニットという流れを経て、1ボーカル+1MC+1DJというハイブリッドな構成に。だが、それ以上に強烈な印象を与えるのは、昭和の不良と江戸時代から続く和の文化をミックスしたかのような独特のスタイルだろう(それでいて3名とも名家の出身という設定なのだから、相変わらず捻りが効いている)。曲名も「蛮殻ミックスモダン」や「張拳ゴーアヘッド」などほとんどの楽曲が「漢字+カタカナ」という初期の椎名林檎を彷彿とさせるメソッドを採用しており、全体的に“古いけれど新しい”感覚を貫いているのが印象的だ。 これは楽曲においても同様で、代表曲の「蛮殻ミックスモダン」は全体的に和風の音色や歌唱を取り入れつつも、ブラジルのサンバやインド音楽からの影響もふんだんに取り入れたパーティーチューンで、これまでの2組の楽曲とは明らかに印象が異なる。というか、あまりにも独特すぎて、他に喩える音楽が存在しないくらいにブッ飛んだ仕上がりだ(自国の伝統的な音楽に他国の音楽を大胆に導入することで、独特の高揚感を生み出しているという点では、BTSの「IDOL」などが近いかもしれない)。エレクトロポップ調の「衝天プチョフィンザ」や「鉄槌ピシャゲルド」といった楽曲はもう少し落ち着いているものの、民謡的なフウカのボーカルと、性急にまくしたてるウツホのMCの強烈なコントラスト、そして高揚感に満ちたトラックという組み合わせは一貫しており、独特のカオティックなポップサウンドが生まれている。前2作と比較しても異質なすりみ連合のサウンドは、3作にわたって緻密な世界観を構築してきた『スプラトゥーン』だからこそ実現できるものであり、まさにここでしか楽しめないユニークな音楽体験が凝縮されている。 ■過去最大のイベントのために『スプラトゥーン』を彩ってきた3組が遂に結集 『グランドフェスティバル』では今回紹介した3組それぞれのライブに加えて、合同ユニット「ヌラネバセブン」のパフォーマンスも披露される。シリーズの顔となって活躍してきた3組が一同に会するわけだが、これまでの作品では各ユニット同士のクロスオーバー自体はあったものの、3組が結集してのコラボは史上初。先日ついに公開された「タイム・トライブ」は約6分に及ぶ壮大な楽曲となっており、『スプラトゥーン』らしいエレクトロポップをベースとしつつも、各ユニットごとのパートではそれぞれの音楽性やキャラクターがしっかりと強調されていたり、7名による見事なマイクリレーを経て感動的なクライマックスに向かっていくなど、それぞれの“らしさ”とスペシャル感が詰まった見事な仕上がりだ。歌詞においても、これまで辿ってきた物語を回想し、未来へと向かう力強い姿が描かれており、史上最大のこのフェスを祝うという点でも相応しい楽曲となっている。 『グランドフェスティバル』の開催を華々しく祝い、全力で楽しむためにも、ぜひこれまでのシリーズが生み出してきた楽曲を復習しておくことをオススメしたい(3作品ともにサウンドトラックがリリースされており、一部の楽曲は公式サイトから聴くことができる)。そして、お気に入りのブキとギアとともにフェスに挑むのだ。
ノイ村