小池都知事「食用油で飛行機飛ぶ事知って」国産SAF実現へ廃油回収
日揮ホールディングス(1963)と日本航空(JAL/JL、9201)、ANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下の全日本空輸(ANA/NH)は3月24日、現在の化石由来燃料に代わる航空燃料「SAF(サフ、持続可能な航空燃料)」の国産化を2025年に実現するため、取り組みを拡大すると発表した。3社などが参画する国産SAFの導入・普及を目指す有志団体「ACT FOR SKY(アクトフォースカイ)」に東京都が自治体として初加盟し、原料となる廃食用油の回収キャンペーン「東京 油で空飛ぶ 大作戦」を始める。 【写真】羽田のJAL格納庫で開かれた発表会に出席する小池都知事ら ◆廃食用油の再資源化 日揮によると、国内ではSAFの原料となる廃食用油が年間約50万トン排出され、このうち外食産業など「事業系」が40万トン、家庭から出る「家庭系」が10万トンあるという。事業系の40万トンのうち、12万トンは海外に輸出され、外国企業がSAFを製造する際に使用しており、家庭系の10万トンは廃棄されていることから、事業系廃食用油の回収と家庭系の資源化が課題になっている。 廃食用油を回収し、国産SAFとして循環させることを目指し、「Fry to Fly Project」を2023年4月17日に事務局を務める日揮をはじめ企業・自治体・団体が立ち上げ、現在は98者が加盟。都の参画により、官民一体となって廃食用油の回収量拡大を目指している。 24日に羽田空港にあるJALの格納庫で開かれた発表会で、東京都の小池百合子知事は「家庭で天ぷらなどを揚げた油が飛行機を飛ばすのはすごいこと。食用油で飛行機が飛ぶことや、脱炭素につながっていることを多くの方に知っていただき、回収にご協力いただきたい。キャンペーンを都は後押しする」と述べた。 JALの赤坂祐二社長は「このままでは日本で海外の航空会社にSAFを提供できないことになりかねないと、ANAと共同レポートを策定した。今の技術では廃食用油が有力で、いま活用されていない家庭用廃食用油をジェット燃料にする、夢のあるプロジェクトだ」とあいさつした。 ◆25年に国産化へ 廃食用油などを原料とするSAFは、現在使われている化石由来の航空燃料と比べ、CO2(二酸化炭素)排出量を大幅に削減できる。航空業界は、2050年までに実現を目指すCO2排出を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」の実現を目標としており、SAFの原料となる廃食油などの安定的な調達が課題になっている。 今回、東京都が加盟したアクトフォースカイは、2022年3月2日「サフの日」に設立。加盟各社が実用化に向けた情報交換などを進めており、都が加わったことで加盟者数は38となった。これに先立ちJALとANAは、SAFに対する理解を広げるための共同レポート「2050年航空輸送におけるCO2排出実質ゼロへ向けて」を2021年10月8日に発表している。 SAFの国産化を巡る動きでは、日揮HDとコスモ石油、レボの3社が廃食用油を原料とした国産SAFの製造や供給事業を手掛けるSAFFAIRE SKY ENERGY(サファイアスカイエナジー、横浜市)を2022年11月に設立。コスモ石油の堺製油所内に日本初となる国産SAFの大規模生産プラントを建設中で、2025年の生産開始を目指す。SAF製造能力は、年間約3万キロリットルを計画している。
Tadayuki YOSHIKAWA