Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」 × TV Anime「マッシュル-MASHLE-」 Collaboration Music Video サムネイル

　TikTokを意識した曲作りが叫ばれて久しい昨今の音楽業界だが、アニメ／アニソンもその流れにしっかり乗ろうとしている作品が徐々に増え始めている。アニソンはアニメの映像と連動してダンスを認知させやすい点に加え、Crunchyrollをはじめとした海外アニメストリーミングサービスが日本とほぼ同じ放映時期に配信できるという環境もあって、海外のインフルエンサーが楽曲を認知するタイミングが他の邦楽に比べると早いという特徴がある。今回は、2024年にTikTokでバズった大ヒットアニソンについて、話題となった経緯やダンスの特徴などを交えながら紹介。2023年との比較もしながら今年のバズの要因を深掘りしていく。 【写真】『TikTokトレンド大賞2024』授賞式に登壇したアニメ『しかのこのこのここしたんたん』主人公 鹿乃子のこ（着ぐるみ） 　今年のアニソンバズヒットで真っ先に思い浮かべるとしたら、1月7日にリリースされた、Creepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」（TVアニメ『マッシュル-MASHLE- 神覚者候補選抜試験編』OPテーマ／TOKYO MXほか）で間違いないだろう。単色な背景画面をバックに無表情で“BBBBダンス”を踊る主人公・マッシュのシュールな姿がミーム化し、アニメの放送直後から国内だけでなく海外まで巻き込んで大流行。この公式楽曲を使ったTikTok動画は1月20日時点で45,000本だったが、約1年が経過した12月21日時点で300万本を突破。昨年TikTokでも広がりを見せたYOASOBIの「アイドル」が約48万本、2022年から継続的に流行したHoneyWorksの「可愛くてごめん (feat. かぴ)」が330万本（いずれも2024年12月21日時点での数字）ということを考えると、その伸び方がいかに驚異的なのかがわかるだろう。 　海外でウケた理由としては様々な媒体で考察されているが、 ・誰もが踊りやすいシンプルなダンス ・海外との親和性の高いHIPHOPジャンルかつジャージークラブという現在の世界的トレンドを取り入れた楽曲 ・国内／海外のインフルエンサーによる口コミと拡散 　という三点は間違いないだろう。もう少し深掘りすると、「Bling-Bang-Bang-Born」リリース初週では国内よりも海外の方がTikTokではキャッチアップが早く（いわゆるアーリーアダプター）、その後国内でもダンスカバーの流行が波及したという推移を辿っている） 　ちなみにOP映像のダンスがTikTokのバズを狙って作られたものだと思っている人もいるだろうが、絵コンテ・演出を担当した榎戸駿氏によればその意図はなかったのだそう（※1）。もちろん、公式サイドがBBBBダンスのショート動画を初めて投稿したのが曲のリリース数日後からであることから、OP映像のダンスを受けてプロモーション側がTikTokバズ狙いに舵を切った節があることは間違いないだろうが、そもそも「Bling-Bang-Bang-Born」自体、一般的なアニソンの構成とはかなり異なる“異色のOP主題歌”だったわけである。様々な偶然が重なって生まれたBBBBダンスが世界中を席巻したのも、面白い巡り合わせの産物と言えるだろう。 　7月から2クール連続で放送されたアニメ『2.5次元の誘惑』（TOKYO MXほか）第1クールEDテーマで、〈それじゃあパシャっと決めポーズ〉でお馴染みの「Watch Me」では、ヒロイン2人がサビで踊る、通称“にごリリダンス”がバズりを見せた。アニメ公式サイドの動きとしては、初回放送当日の7月5日に天乃リリサ役の前田佳織里がサビ部分を踊るダンス動画をTikTokへアップ。それから8月3日までほぼ毎日声優陣や公式コスプレイヤー陣が踊る“にごリリダンス”が投稿され、公式サイドから踊ってみた動画を積極的に投稿していった。 　その後、公式アカウントはアニメ本編の切り抜き動画の投稿がメインとなっていたが、この間にTikTokクリエイターの澤村光彩や、ME:IのRINON、＝LOVEの音嶋莉沙といった面々が動画を投稿した影響もあり、9月中旬頃に楽曲がランキング上位に登場。ここから“にごリリダンス”の流れが一気に変わることになる。9月25日には公式アカウントからED映像の「サビ部分ダンスだけver」を投稿してダンスの振付のお手本を提示。それも功を奏し、楽曲は約1カ月にわたってランキング上位に残り続け、12月21日時点で「#にごリリダンス」で約2000件の投稿が確認できるほどのムーブメントとなった。 　少し遅れて“にごリリダンス”ブームが訪れたのは、バズがいつ起こるかわからない難しさの証明でもあるわけだが、公式サイドが事前にTikTokチャレンジの下地を作り、流行の兆候が見えたタイミングでお手本動画の投稿をするという正しい対応したことで、そのバズをしっかり引き寄せることができたのも確かだ。公式サイドでの下地作りと局面での判断が重要であることを改めて認識するバズであった。