店長名乗る男、優しい口調に「信用しきった」 詐欺被害者が手口語る
三重県内で特殊詐欺の被害が止まらない。キャッシュカードなどをだまし取る預貯金詐欺の被害に遭った津市の80代女性が「被害に遭う人が少しでも減ってほしい」との思いから、取材に応じ、だまされた手口を語った。 【写真】詐欺の被害について語る女性=2024年4月10日午前10時52分、津市、小林裕子撮影 一本の電話が始まりだった。昨年6月16日、女性宅の固定電話が鳴った。金融機関の店長を名乗る男からだった。「振り込みの手続きにはキャッシュカードが必要です。今から職員が自宅に行くのでキャッシュカードを渡してください」 その金融機関には所有する土地のことなど普段からいろんなことを相談しており、「信用しきっていた。完全に店長だと思い込んでしまった」。話した時間は15~20分。口調は優しかった。「高齢のおばあさんでも怒らんと、はいはいと言って話を聞いてくれた」。男にキャッシュカードの番号を伝えた。 勝手口にはスーツ姿の別の男が立っていた。金融機関の職員と思い込み、キャッシュカード2枚を封筒に入れて渡した。 2日後、女性の話を聞いて詐欺を疑った娘が通帳を記帳してみると、3回にわたって計約40万円が引き出されていた。ちょうど年金が支給された直後だった。 40万円は、そうした年金などから少しずつためていた生活費。「(被害に遭って生活費を失い)1日を過ごせない方もいるかもしれない。こういうことを絶対してほしくありません」と、ひときわ強い口調で言った。 事件後、「安易に人を信用してはいけない」と思うように。お金の管理はすべて娘に任せている。
朝日新聞社