物価高でも「100円たこ焼き」を続ける激安スーパー 商品誕生の経緯とコストを抑える工夫「今後も100円にこだわり続けます」
振動でたこ焼き自身が回転して焼き上がる
このご時世、たこ焼きの品質と味を保ちながら、こうした梱包資材も含めて1パック税込100円の価格を実現できる理由を尋ねた。 「そのために様々な工夫をしています。たとえば焼き台もその1つ。当初は鉄板でしたが、今は銅板を使っています。焼く時間の短縮や効率化を図るために研究を重ねたところ、銅の方が熱伝導率がよく、焦げ付きが鉄に比べて少ないことから、銅版に変えたんです。弊社のたこ焼きのための銅板を作ってくれる会社を探し、特注しました」 とはいえ、銅板にも難点があるという。 「鉄と比べると銅は柔らかいんです。鉄板だと焼く時に通常の千枚通しを使っても傷は比較的つきにくいですが、銅板は傷がつきやすい。そこで大阪のたこ焼き専門店が焼く時に竹串を使用されていたのを参考にして、弊社も銅板に傷がつきにくい竹串を使うようにしました。銅板は熱伝導率が高いため曲がりやすく、使用可能年数は一般的に鉄板と比べると少し短いので、少しでも銅板の寿命が延びるように工夫をしてコスト削減に努めています」 焼き方にも工夫を凝らす。広報担当が続ける。 「たこ焼きは生地を流し込んでから焼き上がるまで20分ぐらいかかり、複数の銅板で同時進行で焼いていくのですが、竹串でひっくり返した後の最終工程で銅板がガタガタと振動するようになっています。振動によってたこ焼きが自分でくるくる回転して仕上げる仕組みで、上手に焼き上がるようになっています。粉の混ぜ方のレシピや生地の作り方、焼く手順・時間などを全店統一しており、日が浅い人でも上手に焼けるようにして100円で美味しい品質を実現しています」
たこ焼きの部門単体でも利益が出ている
とはいえ、原材料値上がりの波が押し寄せる昨今、とりわけ、たこの価格高騰は著しい。総務省「小売物価統計調査」によると、2024年11月のたこの価格(東京都区部)は100グラムあたり534円と、今ではまぐろの価格504円(同年同月)よりも30円も高い。たこの価格は10年前よりも2倍近く値上がりしているのだ。 たこ高騰の影響を受け、たこ焼き専門店や祭り・イベントの屋台などでは値上げに踏み切るケースも相次ぐ。直近では、チェーン店「築地銀だこ」が2024年12月4日に価格を改定し、定番商品の「たこ焼(ソース)8個入り」は、テイクアウトが税込669円(値上げ前626円)、店内飲食が同682円(値上げ前638円)に値上げされている。 祭りなどの屋台でも「たこ焼き700円時代」に突入し、「庶民の味のたこ焼きが高級品になってしまった」と嘆く声が全国各地で上がっている。このような状況のなか、「ラ・ムー」「ディオ」の“100円たこ焼き”は儲けを出すことができているのだろうか。 「たこ焼きの部門単体だけでも利益は出ています。確かに、たこの値段はじわじわと上がっていますが、仕入れ担当が一生懸命、様々な仕入れ先を探したり、冷凍のたこも上手に組み込んだりと調達にも工夫をしています。 また、たこ焼き販売は弊社の一部門ですので、パクパクのたこ焼き用だけでたこを仕入れるのではなく、スーパーの鮮魚部門やお惣菜部門などで販売・調理するたこも一緒にセットにして大量に仕入れる形をとっていますので、全体的にたこの仕入れ値を抑えることができるのです」 たこ焼きには紅生姜、天かすなども入り、ソースの上には鰹節がかかる。たこ以外の原材料の仕入れもスーパーの仕入れとセットにしているため、同様に仕入れコストが抑えられるという。 「マヨネーズは別売りで小袋を税込10円で販売しています。昔はサービスで付けていましたが、原材料などの価格がかなり跳ね上がってきましたので、マヨネーズは別売りにし、たこ焼きの価格を保っています」 券売機にはマヨネーズ10円のボタンもあり、客が自分の好みに合わせて選択できるようになっている。
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