大競争時代に突入した高速鉄道輸出、オールジャパンで問われる戦略思考
北陸新幹線が3月14日に開業する。自動車以外で東京から金沢に行こうとすると飛行機か、長い時間をかけた鉄道利用となり、心理的な距離も遠かったが、最速で2時間28分でゆけるとなればぐんと近く感じるから不思議だ。メディアでのご当地紹介も開業前から一気に増えて、誘客効果も上がっている。一方、目を海外に向けてみれば、高速鉄道を巡って、外国勢との激しい輸出競争が展開されている。
鉄道インフラの海外輸出
昨年10月の東海道新幹線50周年に始まり、リニア中央新幹線の着工、そして今回の北陸新幹線など、高速鉄道をめぐる話題が最近多くとりあげられている。正確で安全に運行し、大量輸送が可能な日本の高速鉄道は、省エネ性能も兼ね備え、日本が世界に誇る技術である。安倍首相もこうした鉄道インフラを海外に輸出しようと、外国訪問の際にトップセールスを行うなど、熱心に取り組んでいる。 国土交通省が把握しているだけでも、高速鉄道の整備を計画している国や地域は、アジア・オセアニアでは、台湾、ベトナム、タイ、オーストラリア、インド、インドネシア、ミャンマー、マレーシア、欧州は英国、スウェーデン、そしてアメリカ、ブラジルなど多岐にわたる。それぞれに地域的な事情はあるが、都市化への対応や経済成長、雇用拡大、環境問題など各国に共通した課題も多く、それだけに日本を含めた高速鉄道先進国への期待は大きい。 こうした地域を狙って、日本は積極的な売り込みをかけている。これまでの最大の成功事例は、日本の新幹線技術を海外で初めて採用した台湾新幹線であり、車両はもちろんホームの作り方、車内清掃のスタッフの動き方まで日本そっくりだ。日本の政府も「台湾に続く次の新たなあらたな代表事例をつくりたいと、国交省が中心となって躍起になっている。
外国勢との激しい競争
しかし簡単な話ではない。外国勢との激しい競争もあって稼ぐビジネスに結びつけるのはなかなか難しいからだ。これまでのライバルはフランスのアルストムやドイツのシーメンス、カナダのボンバルディアなど主に欧米勢だったが、最近になって中国勢が目立ち始めた。中国勢は高速鉄道のみならず、都市交通での車両需要などにも積極的な受注攻勢をかけている。昨年秋、米ボストンの地下鉄車両を、中国メーカーがライバルよりはるかに安い受注額で落札し、世界の関係者を驚かせた。 また同時期、中国の建設会社がメキシコでも高速鉄道の建設事業を受注した。インフラ輸出を進めたい中国政府と一体的に戦略を展開しているのは明らかで、競争のフェーズが変わってきたともいえる。 インドなど日本の優れた鉄道システムに関心を寄せる国は多いが、インド市場は中国勢も虎視眈々と狙っている。「値段が安ければ最高水準でなくても中程度のスペック(仕様)で十分」とする当事国の判断もあり、他の工業製品と同様、「良いモノを作っていれば黙っていても買ってもらえる」というイメージではなくなっている。したたかな交渉戦術なども含めて、日本の高速鉄道輸出にはオールジャパンでの一段の戦略的思考が求められている。 (3Nアソシエイツ)