【ドジャース―マーリンズ】七回に、50号2ランを放ち、雄たけびを上げるドジャースの大谷翔平（中央）＝19日、マイアミ（水島啓輔撮影)

米大リーグ、ドジャースの大谷翔平（30）が19日、3本塁打2盗塁の大活躍で、前人未到の「50本塁打、50盗塁」の偉業を達成した。昨秋に右肘を手術した影響で今季は投打での「二刀流」を封印。指名打者（DH）として出場を続けながら、パワーとスピードを兼ね備えた新たな選手のスタイルを確立した。メジャー史上例がないDH専門での最優秀選手（MVP）受賞にも期待が高まっている。 【写真】デコピンを抱きかかえる大谷夫人の真美子さん 大谷は8月23日にメジャー史上6人目となる「40本塁打、40盗塁」を達成。同30日に史上初の「43本塁打、43盗塁」をマークした。米球界で「真の長距離打者」として評価される50本塁打を初めて達成。ナ・リーグの本塁打王争いでは2位に大差をつけて独走し、打点も19日の試合で10打点を荒稼ぎし、リーグトップを走っている。 野球文化学会会長で米大リーグの歴史に詳しい名城大の鈴村裕輔准教授は大谷の盗塁数に着目し、「米球界ではかつて機動力はそれほど重視されていなかった」と話す。1988年にホセ・カンセコ（アスレチックス）が初めて「40本塁打、40盗塁」を達成してMVPを受賞し、スラッガーの機動力への意識も高まった。今季の大谷で「40－40」は6人目だが、出場126試合の最速記録で達成し、その後も数字を伸ばし続けたのが特筆すべき点だ。 米大リーグでは昨季からベースが少し大きくなり、塁間が4・5インチ（約11・4センチ）縮まった中、大谷はその流れに乗って9割を超える盗塁成功率を誇った。つねに次の塁を狙うアグレッシブな野球をみせ、鈴村准教授は「メジャー史上最高額の契約を結んだ選手が『50－50』を達成したインパクトは大きい」と評した。 米大リーグのMVPは全米野球記者協会会員30人の投票で決まり、成績だけでなく、「WAR（勝利貢献度指数）」と呼ばれる指標も判断材料とされている。打撃や守備、走塁、投球を総合的に判断して、どれだけチームの勝利に貢献したかを示す指標で、守備に就かないDHには不利な点もあるが、エンゼルスからドジャースへ移籍した今季の大谷は勝利に貢献した試合も多く、歴代のDH専門の選手と比べても、トップクラスのWARを誇っている。 大谷は2021年と23年に二刀流が評価されてア・リーグMVPを満票で受賞した。今季は「打力」と「機動力」の両立がどう評価されるか。鈴村准教授は大谷をナ・リーグMVPの「最有力候補」とした上で「守備に難点がある選手の〝終着駅〟というDHのイメージを、大谷がガラリと変えた」。米球界に新たな衝撃を与えたといえるだろう。（丸山和郎）