「異端児」の有終の美 TVR T 400R トップギアの映像で内装を再現 ナンバー付きGT1ル・マン・マシン(2)
340km/h以上が疑問なほど親しみやすい
筆者がAUTOCARへ加わり、初めて乗ったTVRは、ピーター・ウィーラー氏時代のタスカンだった。ドアミラーの下に隠れたボタンを押して、ドアを開いた瞬間の印象は今でも忘れない。 インテリアのデザインは、息を呑むほど前衛的。レバー式のハンドブレーキと、3スポークのステアリングホイールが、不自然なほど普通に見える。ダッシュボードやセンターコンソールはレザーで包まれ、20年以上前の少量生産車として考えれば高品質だ。 メーターパネルには、デジタル・ディスプレイが組み込まれている。スクロールすることで、回転数やスピードなどの表示を切り替えられる。シートは小柄だが、クッションは肉厚。シフトアップ・ライトも備わる。 ダッシュボード上部にはオーディオデッキが収まり、センターコンソールの先にパワーウインドウのボタンがある。それ以外の殆どの車載機能は、チルトするステアリングホイールの奥へ並んでいる。アルミ製のペダルが、フロアヒンジで固定されている。 キーをひねると、あっけなく轟音が充満する。音圧に圧倒されそうだが、4.4L直列6気筒は扱いやすい。荒々しさはないといっていい。 クラッチペダルはかなり軽く、シフトレバーは機械的な手応えが気持ちいい。市街地の速度域でも、感心するほど運転しやすい。本当に340km/h以上出るのか、疑問に感じるほど親しみやすい。
異端児的TVRの有終の美を飾ったT 400R
1速のレシオはかなりロング。2速以降はしっかりクロスしている。動力性能の核心へ迫るには、充分な回転数まで引っ張る必要がある。粘り強く回り、中回転域からたくましく速度を上昇させていく。 ストロークの長いアクセルペダルを踏み込むと、豪快なストレート6サウンドが放たれる。大排気量ユニットならではの、ドライで生々しい響きが、カーボンファイバー製ボディに共鳴する。 このT 400Rは、ル・マン24時間レースを前提としたGT1マシンのコピー。通常のタスカンと比較して、あえてステアリングの反応は若干鈍く調整されている。ミュルザンヌ・ストレートを300km/h以上で疾走する場面なら、歓迎されるはず。 グレートブリテン島の傷んだ路面で海岸を目指すと、ボールジョイントのサスペンションは、時々痛烈な衝撃を届ける。車内には、痛々しいノイズが反響する。 タイヤはトーヨー・プロクセス。通常のドライバーなら戸惑うほどグリップ力が高い。見通しの良いストレートでは、甚大なトラクションを確かめられる。 ナンバープレートを付けたル・マン・レーサーといえる、市販されなかったT 400Rと、2台限りのT 440R。理解するほど、魅了される。ウィーラー時代の異端児的TVRとして、有終の美を飾ることになったが、これ以上の偉業は作りようがなかっただろう。 協力:TVR101社、スティーブン・ウッドロウ氏
TVR T 440R(2002~2003年/英国仕様)のスペック
英国価格:7万4995ポンド(新車時)/24万ポンド(約4608万円/現在)以下 生産数:4台(プロトタイプ含む) 全長:4404mm 全幅:1850mm 全高:1200mm 最高速度:346km/h 0-80km/h加速:3.8秒 燃費:-km/L CO2排出量:-g/km 車両重量:1050kg パワートレイン:直列6気筒4397cc 自然吸気DOHC 使用燃料:ガソリン 最高出力:420ps/6000rpm 最大トルク:53.1kg-m/6000rpm トランスミッション:5速マニュアル(後輪駆動)
サイモン・ハックナル(執筆) ジョン・ブラッドショー(撮影) 中嶋健治(翻訳)