「多くの人が理想的な恋愛をしていると思っているが、合理的にマッチングされた“偽恋愛”だ」 “童貞學”提唱の現役東大生が疑問視する現代の恋愛主義
作家・ジャーナリストの佐々木俊尚氏は2021年のメルマガで、昭和前期までは見合い結婚が一般的で、自由恋愛・恋愛結婚は「階級社会からの解放」だと指摘。一方で、現代は「恋愛しなければならない」という義務感から抑圧に転じた状況だとしている。「お見合いや職場結婚がなくなり、自由結婚になった結果、恋愛強者と言われる男性だけが女性を独り占めするようになった。また、30代ぐらいの女性と話していると、“恋愛めんどくさい。でも子ども産みたいし、生活の安定が欲しいから結婚したい”と言う人は多い。“恋愛はいいから、いきなり目の前に夫が現れればいいのに”という状態になっている」と述べた。 これに猫跨ぎさんは、「民主主義的に理想的な恋愛結婚をみんなしている風に思っているけれども、実際にはかなり合理的なロジックによってマッチングしている。私からすれば、みなさん偽恋愛をしている。その“安定を求めている人たち”は、マッチングの過程を恋愛と捉えようとしているということだ」とした。
猫跨ぎさんによれば、「恋愛」はしたくなくても落ちてしまうもの、「偽恋愛」は恋愛したいと思って探しにいくもの。「マッチングした後に生まれるものは“親密さ”として、恋愛と一度区別して考えたい。まさに雷に打たれるという、一目惚れという表現に該当するのが恋愛だ」「“誰かいい人いないかな”“この人と恋愛しよう”というものは、偽恋愛と定義できないかと考えている」と述べる。 これに佐々木氏が「純粋な恋愛と、完全に合理的なマッチング、この2つしかないことはなく、間にはグラデーションがある」と指摘すると、「合理的なものと個人主義的なものとの間を行き来するのが、近代の恋愛の移行の仕方ではないか。日本はこういう方向に向かっていくと思っている」との考えを示した。
■マッチングサービスはあり? この先の“理想の恋愛”は
東京都が「AIマッチングサービス」を開発中で、今年の夏に実用化予定となっている。こうした自治体の取り組みは「当然の成り行きだ」と猫跨ぎさんは話す。 「利益追求をしたいのは市場の欲望。家族から労働力を引っ張ってきて、市場にいらなくなった人は家庭に返すということを、日本はずっとやってきた。家族ができないことには何も始まらないという意味で、市場としては合理的なマッチングをしてほしい。マッチングサービスで探しに行った恋愛を、みんなが“運命の恋愛なんだ”と思うようにしていったほうが、恋愛主義と矛盾しない合理的なマッチングを加速できる」