【#佐藤優のシン世界地図探索㊷】2024年の「世界早見表」
佐藤 それからイスラエルとハマスの争いは、イスラエルが勝ちますが、引き続きガザ地区はグチャグチャでしょうね。パレスチナ自治政府が入っても相当、混乱しますから。だから、中東の混乱は続きます。 ――どこが一番、得をしてるんですか? 佐藤 パレスチナ問題はそんなに大きな問題ではありません。今回の紛争でイランの存在感が増したことが今後、地政学的に無視できない状況を与えると思います。 ――イランは実に上手くやっていますよね。 佐藤 ただし、イランの目標はイスラエルを地図上から抹消することなので、一気に勝負を掛けて来るかもしれません。だから、イスラエルがガザでもたついていると、まずイランが支援するテロ組織「ヒズボラ」が本格的にイスラエルを攻撃してくることも考えられます。 ――それは第五次中東戦争では......。 佐藤 イスラエルは今動員で55万人、人口は950万人でユダヤ人は750万人です。この動員数は、管理経済に大きな打撃を与えます。 ――動員率は7.3%を越えています。第二次世界大戦の動員率は、勝利した米国が最大7.62%で、負けたドイツが14.57%でした。イスラエルはそう長く戦争を続けられません。 佐藤 勝利宣言するならば、ハマスがどの程度残っている段階でやるかですよね。すでに統治機関として、ハマスをガザから追い出すことには成功しています。しかし、完全に絶滅させる事はできません。 だから、どの程度まで弱らせるかということで、軍事指導者、政治指導者の要所にいる人物をピンポイントで中立化していくということだと思います。 ――はい。 佐藤 その後は多分、二重に壁を作り、間を地雷原にします。そうすれば今回のような事態の再発は防げます。 ――朝鮮半島38度線の非武装地帯のようにして、高い塀を築く。『進撃の巨人』のような世界観であります。 佐藤 今回、イスラエルとしては警戒心が足りなかったので、インテリジェンス機関の立て直しは必須です。また、イスラエルの政局は混乱します。諜報機関も政治も皆、責任を取らないとならないですから。本件は終わってからが大変ですね。 ――はい。イスラエルの戦後国内体制の立て直しですね。ちなみに、米国と日本の関係は今年は? 佐藤 日本の報道がずれているのは、米国に日本産パトリオットミサイルを渡して、それを米国がウクライナに横流しをするという憶測をしているという点です。 ――そのように騒いでいます。 佐藤 仮に、その地対空ミサイルをウクライナに横流ししたら、ロシアは黙っていると思いますか? ――黙ってないです。怒ります。そして、ロシアから広島へのガスが止まります。 佐藤 ロシアは静かです。多分、米国に備蓄しないとならないパトリオットミサイルは、今、イスラエルにも出しているから最低ラインを下回っているはずです。日本産のパトリオットは、それを埋める分をくれというのがおそらく真相でしょう。日本産パトリオットは、米国のライセンスで作っていますから、なかなか断れないはずです。 ――親分の所で「チャカの弾が切れかけとるから、お前んところで作っとる弾をちょいとくれんか?」という感じですね。 佐藤 向こうの図面で作ったものですからね。 ――親分の言うことに逆らってはダメです。最新鋭ステルス戦闘機・F35Bを売ってくれなくなりますから。 次回へ続く。次回の配信は2024年2月2日(金)予定です。 取材・文/小峯隆生