【#佐藤優のシン世界地図探索㊷】2024年の「世界早見表」
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT OpenSourceINTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく! * * * ――今回は忙しいビジネスパーソンのために、2024年「世界早見表」をご提示いただけませんでしょうか? 佐藤 まず、ウクライナ戦争はウクライナは勝利できすに終わってしまいますね。 ――いよいよNATOと最終決戦かと思ったら、プーチンは「NATOとはやらない」と言っています。 佐藤 むしろNATOのほうがロシアと戦うことを恐れています。勘違いしている評論家や記者が多いのですが、ロシアはEUにウクライナが入ってもらったほうがいいと思っているんです。 ――なんと、偉大な大国の懐の広さ!! でも、なぜですか? 佐藤 大量の安価なウクライナの小麦がEUに入ったら、EUの農家はどうなると思いますか? ――欧州の農家は全滅です。欧州全土で農民一揆が起ります。 佐藤 EUは大混乱ですよね? ――はい。 佐藤 次に、ウクライナの優秀で安い労働力が、EUに大量に流入すると? ――例えばドイツには外国人労働者が約355万人います。しかし、優秀なウクライナ労働者が来れば、その外国人労働者の仕事を奪いますから、混乱が生じます。 佐藤 そうです。さらにウクライナはマフィア組織が強いんです。管理売春システムや麻薬がEUに入って行くことになります。それで、戦争が終われば大量に余剰となった兵器の横流しが始まり、これもEUに流れるでしょう。ジャベリン銀行強盗とか、出て来る可能性もありますよね。 ――横流しはすでに準備万端らしいです。米国防省によると、米国とその他の国から送られた16億9000万ドル(約2450億円)相当の兵器のうち、10億ドル(1450億円)分が追跡不能とのこと。米国防省がまとめた報告書は、「盗難や流用のリスクを高めかねない」と警告しています。もしジャベリン乱射事件が発生すれば、ライフル一丁の乱射事件と桁違いの凶悪事件になります。 佐藤 だからロシアからすると、ウクライナのEU参入は良いことばかりです。ウクライナに早くEUに入ってもらって、人物・お金・物品の移動を自由にして下さいということなんです。 ――大国ロシアの懐の広さはまさにシベリアの寒さ。悪いモンは全て自国に来ないで、EUに行く。 佐藤 ババ抜きのババをとったようなものですね。 ――すさまじいトランプゲームです!! これで、米国大統領にトランプがなれば、まさにEUはさらにジョーカーを握らされる!! 佐藤 ヤバいものが全部きますね。 ――今でも、ウクライナからの難民で周辺国は四苦八苦していますよ。 佐藤 EUに入れば難民ではなく、普通の労働者として来れますからね。 ――国境無き農産物、マフィア、麻薬、横流し兵器団は最強であります。 佐藤 それが分かっているから、EUはなかなかウクライナを入れませんよ。 ――でも、ウクライナはNATOに入ったらダメですよね? 佐藤 NATOには入れません。それはロシアが停戦する時の絶対条件です。もし、NATOに入るなら、緩衝地帯として別の国をひとつ作る必要が生じます。 ■ガザ