事故車両、完成時は原則非公開に 福知山線脱線でJR西が遺族らに説明 将来的には検討も
JR西日本は9日、乗客ら107人が死亡した平成17年のJR福知山線脱線事故の遺族らへの説明会を開き、大阪府吹田市の社員研修センターの隣に整備する事故車両保存施設について、来年末を予定する完成段階では一般向けには原則非公開とすると説明した。 【写真】震災遺構となった大川小学校、阪神大震災を伝える「神戸の壁」、一般にも公開されている墜落した日航機の後部圧力隔壁 説明会は兵庫県宝塚市で非公開で行われ、長谷川一明社長らが出席。オンラインで中継した別会場も含めて遺族や負傷者ら計65人が出席した。 説明会後に記者会見した長谷川社長は、一般公開は社会に事故の事実を伝える意義があるとする一方、遺族や負傷者の「つらい思いや悲痛も重く受け止めている」と理由を述べた。例外として事故当時に救助に携わった警察や消防関係者、運輸事業者は要望があれば公開するとしている。 長谷川社長は施設について「哀悼や命の大切さを伝えていく場にしたい」と述べ、将来的な一般公開については引き続き検討したいとした。 ■大川小、神戸の壁、JALの機体・・・ 災害や事故の遺構保存 これまでも議論に JR福知山線脱線事故の事故車両をはじめ、災害や事故の遺構の保存を巡っては、被害者遺族や負傷者の心情と教訓を後世に継承する意義、災害や事件事故に関する記憶の風化など、さまざまな観点から過去にも各地で議論となってきた。 平成23年の東日本大震災の津波で児童・教職員84人が死亡・行方不明となった宮城県石巻市立大川小では、被災した校舎の保存を巡り、「つらい記憶を思い出したくない」「未来の子供たちを津波被害から守ることにつながる」など賛否両論があったが、最終的に教訓を伝える震災遺構として保存され、一般公開されている。 同じく津波で被災し、43人が犠牲となった同県南三陸町の防災対策庁舎も「見るのがつらい」という遺族感情を踏まえ、解体するか、伝承のため保存するかで揺れたが、今年3月に町長が「庁舎が未来の命を守る役割を担っている」として震災遺構として保存すると表明。恒久保存の結論に至った。 一方、7年の阪神大震災では、震災遺構の概念が現在ほど一般的でなく、多くの被災建物が取り壊され、保存されているのはごく一部だ。