国内外での協調が求められる、自動運転の法整備
中山 幸二(明治大学 専門職大学院 法務研究科 教授) この10年で自動運転は、技術開発とともに法整備が進んできました。2020年にレベル3、2023年にレベル4の自動運転を許容する改正道路交通法が施行され、無人バスや無人タクシーが社会実装化されつつあります。人口減と高齢化が進む日本は、旅客運送だけでなく、貨物運送でも深刻なドライバー不足です。また、交通事故の約9割が、発見の遅れや操作ミスなどのヒューマンエラーに起因していることも大きな問題です。これらの打開策としても期待が高まる自動運転に関し、法整備の観点から解説します。 ◇自動運転において世界をリードする、日本の法整備 自動運転のレベルは、下記のような5段階に分けられます。レベル3までは、あくまでもドライバーがいるものとし、いざとなれば人間に運転を交代することを前提に法律がつくられていました。ところがレベル4以上は、ドライバーのいない状態です。そのなかで、どのように安全性を担保していけばよいのでしょうか。まずは世界の状況と照らし合わせながら確認していきましょう。 自動運転の進捗状況は、国の法制度によって違います。産業および実用化の面でいえば、現状トップを走っているのが中国やアメリカです。 国際的には、道路交通に関する条約として、1949年に国連で採択されたジュネーブ条約と、ヨーロッパの国々が中心となって1968年に策定したウィーン条約があります。自動運転においても、多くの国は、これら道路交通条約の統一規則にのっとり、法整備を進めています。しかし中国はどちらにも加盟しておらず、国内ルールのみで自動運転を推進できるので、車両生産や実用化が急ピッチで進んでいます。 また、アメリカは、ジュネーブ条約を批准しているものの、そもそも自動運転を想定していなかった条約によって制限されるべきではないという見解を示しています。国内のルールとしては州ごとの法律に基づいて進められ、車両の販売においても、日本のような型式認証ではなく開発した会社が自ら認証できるので動きが早い。その分、事故が起こった場合には、企業が責任を負う構造となっています。 一方、国際的な法整備の面では、世界をリードしているのが日本とドイツです。 両国の企業が開発する自動運転車両は、その安全性が確認され、実装できる技術を世界標準にしていくことが見込まれています。そもそも日本はジュネーブ条約のみ、ドイツはウィーン条約のみ批准しているため、制約の差異はあったのですが、新しい車を開発し安全性を確認した場合、相手国でも認めるという相互認証の協定を結び、市場も共有してきました。細かい車両基準の制定や事故があった場合の対応法など、ほぼ足並みをそろえて法整備を進めています。多くの国が参加する自動運転の社会実装に向けた国際会議は、日本やドイツらが議長あるいは共同議長として、議論を牽引しているのです。