「歯ぎしり」は放置しても大丈夫?実は怖い〈歯ぎしり〉について医師が解説
慢性的な頭痛や肩こり、顎の疲れを感じてはいませんか?噛み合わせが悪い人や不眠が続く人は要注意。それは歯ぎしりをしているからかもしれません。医師が解説します。 【写真】「歯ぎしり」は放置しても大丈夫? ■歯ぎしりをしてしまうのはなぜか? 歯ぎしり(ブラキシズム)とは、上下の歯が非機能的な接触を生じている状態を指しています。 寝ている時に起こる場合と、目覚めている時に起こる場合とにより、睡眠時ブラキシズムと覚醒時ブラキシズムとに分けられます。 また、ブラキシズムは下顎の運動を伴うグラインディング(いわゆる歯ぎしり)とタッピング、一定の下顎位で行われるクレンチング(かみしめ)とに分類することができます。 歯ぎしりの原因のほとんどはストレスだと言われていて、私たちは、寝ているとき無意識に歯を食いしばることで、不安や憂うつな気持ちを解消していると考えられています。 また、因果関係は明確になっていませんが、お酒やタバコが原因で歯ぎしりが起こるといわれていますし、アルコールやニコチンの摂取は、歯ぎしりの症状を悪化させる危険性があると考えられています。 噛み合わせが悪い人は歯ぎしりが起こりやすいと言われていて、噛み合わせたときに、特定の歯だけが強く接触していたり、詰め物・被せ物が高過ぎてぶつかっていたりすると歯ぎしりの原因となることがあります。 ■歯ぎしりを放置するとどうなる? 寝ている間に起こる歯ぎしりは、自覚しにくいのが厄介なところであり、家族などに指摘された方もいると思います。 そのほかにも、下記などにおいても、歯ぎしりをしている疑いがあります。 朝起きたとき奥歯が痛い 起床時に顎が痛い 慢性的な頭痛・肩こりがある 歯が欠けたり割れたりしたことがある 頬の内側に噛んだ跡がある場合 歯ぎしりを放置すると顎関節症になる恐れがあります。 顎関節症は、顎の関節に痛みがあったり、口の開閉が困難になったりする病気であり、その発症原因は、日本人特有の後頭部が短い骨格の影響とされていますが、歯ぎしりも顎関節症を引き起こす要因のひとつです。 ギリギリと歯ぎしりをすると、下顎とつながる顎関節を傷めやすいため、顎関節症を引き起こすリスクが高まるので、歯ぎしりを放置しないように注意しましょう。 ■放置してはいけない危険な歯ぎしりとそうではない歯ぎしりの違い 歯ぎしりをすることでストレスを解消しているのですが、歯にダメージを与えるほどの過度な歯ぎしりは当然改善すべきです。 特に、睡眠中に無意識下で行われる歯ぎしりは、歯に、自分自身の体重の3倍くらいの力がかかるともいわれていて、短時間ならともかく、人によっては1時間くらい続けて歯ぎしりをしているケースもあるようです。 それが長年にわたって続くと、歯がどんどんすり減り、かみ合わせが乱れ、うまく咀嚼できなくなるなど、放置してはいけない危険な歯ぎしりに該当します。 歯科医院では、型を摂って作製したナイトガード(マウスピース)を、寝るときに装着して、強い力から歯や顎を保護する治療法があります。 ナイトガードを付けていれば、睡眠中に歯ぎしりをしても、歯がすり減ったり欠けたりするのを防ぐことができますし、ナイトガードの硬さや形状を調整することで、歯ぎしりそのものの回数を軽減できるケースもあります。 また、補綴治療で噛み合わせを改善する、あるいは歯並びそのものを整える矯正治療によって、歯ぎしりの症状軽減や解消につながることがあります。 今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。 文/甲斐沼孟(医師)
甲斐沼 孟