豊田兼が400mハードル史上3人目の47秒台でパリ五輪代表に内定 通過タイムからわかる47秒99までのプロセス【日本選手権2日目】
「昨日の予選のあと、決勝のハードル毎の通過タイムを豊田とやりとりしながら出したのが、(日本記録を上回る)47秒82でした。予選はゆとりがありましたし、練習で5台、8台くらいまでは日本記録を出すくらいのタイムではやっていました」 レース当日の練習では、ハードル間を3秒67で3台目まで走った。だがそのタイムは、想定した通過タイムより少し速かった。 「(3秒67は)ちょっと速すぎる、と言いました。速度出しすぎ注意だけど、昨日のようなゆっくりすぎ(予選は2台目までが3秒73で3台目までが3秒87)も注意だよ、と。ちょうど中間くらいだと僕が言って、豊田が『じゃあ、このくらいの出力で行きます』みたいなやり取りをして送り出しました」 この日の豊田は1~2台目こそ3秒67と、やりたかったタイムより速く入ってしまったが、2~3台目は3秒77で前日より速く、しかしアップ時よりは遅く走った。中・長期的に積み上げてきた練習と、直前の練習をしっかりと噛み合わせて、最適の試合ペースを作る。選手とコーチの息が合っているからこそ、出すことができた47秒台だった。 ■パリ五輪に向けて明確になった練習でやるべきこと 今回の日本選手権は優勝すればパリ五輪代表に内定した。優勝だけを考えたら、ここまで前半から攻めるレースをしなくてもよかったかもしれない。その理由を問われた豊田は次のように答えた。 「(内定を決めて)パリ五輪に出場することになった場合、前半から飛ばすレースが必要になります。そういうレースを試す試合が今後ないので、日本選手権の決勝が絶好のタイミングでした」 昨年までは前半飛ばすレースをすると、終盤で失速することも多かった。今年5月3日の静岡国際でも5台目通過が21秒15と、日本選手権決勝に近い速さで前半を試したが、終盤の力がなく筒江海斗(25、スポーツテクノ和広)に0.04秒差で敗れた。5月19日のゴールデングランプリ(以下GGP)は48秒36で優勝したが、5台目通過は21秒64とスピードを抑えた。