「100年企業」倒産急増の深刻な理由 過去10年で最多 コロナ禍・物価高・後継者不足 金融機関の融資の審査に変化も
業歴100年以上の〝超老舗企業〟の倒産が相次いでいる。帝国データバンクによると、今年は過去10年で最多の件数になる見通しだという。日本は100年企業が多いことで知られるが、コロナ禍を経て業績の悪化や物価高、後継者不足などの要因に悩まされているという。 帝国データバンクのまとめでは、業歴100年以上の企業の倒産件数は今年1~9月まで計110件だった。2019年の水準とすでに並び、過去10年で最多を更新する見通しだ。 倒産の原因は、物価高(22件)や後継者難(16件)のほか、コンプライアンス(法令順守)違反や税などの滞納も含まれている。 帝国データの担当者は「金融機関が融資の審査を行う際、かつては『業歴が長いから安心』とスルーしていたのが、事業の本質など事業性評価から判断しようという動きにシフトしている」という。 業歴100年以上の企業は24年9月時点で国内で4万5284社ある。500年以上は47社、1000年以上という企業も11社に上る。世界でも例が少ない息の長さだが、「倒産は引き続き、高水準で推移するのではないか」(同担当者)とみる。 雑誌『経済界』編集局長の関慎夫氏は「経営者の高齢化が一番大きい。また、コロナ禍では多くの企業が業績を落とし、融資制度を利用していたが、細々と生きながらえてきた企業が顧客を失うと、元に戻すのは厳しい」とみる。 労働市場の変化や人件費高騰、物価高を受けた価格転嫁など、現在の課題が老舗企業にも影を落としていると関氏は指摘する。 「老舗の強みは一度つかんだ客に対し満足度を下げない顧客基盤を持ち、従業員も家族経営的な環境で働いてきたことだ。だが、人件費が下げられず、価格を上げることも容易ではなく、長い付き合いを泣く泣くやめてもらう例もある。ステップアップとして就職を考える若者を採用するのも難しく、あきらめに近い倒産もあるのではないか」