JFLの鈴鹿で始まるスペイン女性監督の挑戦
スーツにネクタイ姿の男性指揮官たちが居並ぶなかで、凛とした雰囲気が伝わってくる。 今シーズンの日本フットボールリーグ(JFL)を戦う16チームの監督が、一堂に会する監督会議が11日に都内で開催。JFLへ初めて参入する鈴鹿アンリミテッドFCの新指揮官に就任した、スペイン人女性のミラグロス・マルティネス監督(33)が、ライバルチームの監督たちと初めて顔を合わせた。 3つのカテゴリーに55チームが集うJリーグだけでなく、4部に相当するJFLでも女性指揮官は初めてとなる。17日に開幕する新シーズンへ向けて一人ひとりが抱負を語ったなかで、始動から7週間の時間を準備に費やしてきたマルティネス監督は、笑顔で切り出した言葉に手応えをのぞかせた。 「私がスペインからもってきた攻撃的なサッカーを展開すると同時に、対戦相手や試合状況によってしっかりと守ることも含めて、いろいろなことを考えながら戦えるチームを作っていきたい。チームのこともますます把握できているし、いまは開幕が本当に楽しみです」 三重県名張市を活動拠点としていた、前身の三重FCランポーレの設立から40年目を迎えた鈴鹿と、現役時代はセンターバックとしてプレーし、2007年からスペイン国内で指導者の道を歩んできたマルティネス監督。縁もゆかりもない両者を結びつけたのは、実はインターネットによる検索だった。 5度目の挑戦で悲願のJFL参入を決めた鈴鹿は、勇退した辛島啓珠監督(現マイナビベガルタ仙台レディース監督)の後任人事に着手するなかで、全国規模のリーグでは前例のない女性監督を招聘することを決めた。鈴鹿の吉田雅一常務取締役が舞台裏を明かす。 「JFLの一番下、J1のトップから数えれば71番目の位置づけとなる私たちが、将来のJ1へ向かってどのように戦っていけばいいのか。サッカーではひとつずつ勝たなければいけないなかで、経営では目新しいことをやらなければ埋もれてしまう。ならば、事例のないところで挑戦しよう、と」 ただ、あても何もない。 まずは検索エンジンで「サッカー 女性 監督」と打ち込んだが、監督に必要な公認S級コーチライセンスを取得している日本人女性は、わずか6人しかヒットしなかった。しかも、なでしこジャパンの高倉麻子監督を筆頭に、全員が指導に就いていた。 国内でのリクルートをあきらめ、海外へと対象を広げていくうちに、1990年代からスペインで指導者の道を歩み、男子チームも指導した実績をもつJリーグ特任理事の佐伯夕利子さんとつながった。その縁で紹介されたのが、女子チームを率いていたマルティネス監督だった。 メールでのオファーを受けたマルティネス監督は、鈴鹿を率いることを即決する。それまで指揮していたチームの監督を、シーズン途中で辞任して来日した理由をこう語る。