『Grand Theft Hamlet』コロナ禍で仕事を失った舞台役者たちが『GTAオンライン』内でハムレットを上演しようと奮闘するドキュメンタリー
2021年、イギリス。コロナ禍によるロックダウンで仕事を失った舞台役者のサムとマークは、現実逃避気味に『GTAオンライン』をプレイしていた。たまたま出くわしたGTA世界の野外劇場“バインウッド・ボウル”で彼らはあることを思いつく。 ……あれ、外に出ちゃいけないならココでシェークスピアやればよくねぇ? ちょっと騒々しいけどシェークスピアの時代の演劇は今よりワイルドなものだったんだし、復讐劇のハムレットはGTA世界にピッタリだし。 しかし、ここはGTAオンライン。なにもしてなくても暇を持て余したどこかのクソガキに撃たれる修羅の世界だ。せっかく集まったわずかな“観客”はレーザー銃をぶっ放すし、協力してくれる“俳優”を探すためのオーディションの告知は警察にやられて中断される。果たしてハムレットを上演することはできるのか? サム・クレーン/ピニー・グリルス監督による『Grand Theft Hamlet』(2024年、90分、イギリス/オランダ)は、そんな思いつきから始まった顛末を扱ったドキュメンタリー映画。撮影はゲーム内の携帯電話のカメラ機能を使って行われているという。現在イギリスで劇場公開中で、2025年1月17日よりアメリカで上映されるほか、映画配信プラットフォームのMUBIでも取り扱われるようだ。 なおイギリス等ではすでに好評のようで、各国映画祭や映画賞でドキュメンタリー部門のさまざまな賞を受賞しているほか、世界的映画サイトIMDBのスタッフによる2024年のベストドキュメンタリーのひとつにもピックアップされている。 マルチプレイゲームの世界の中で撮影されたドキュメンタリーとしては、ちょうど『DayZ』のロールプレイヤーたちを追った『ニッツ・アイランド 非人間のレポート』(2023年、98分、フランス)が渋谷シアター・イメージフォーラムほかで上映中。 (往々にして破天荒な)ロールプレイからその背後にいるプレイヤーのリアルライフがにじみ出るさまを描いた同作と同様、『Grand Theft Hamlet』もまたカオスなバーチャル世界の中で繰り広げられるリアルな人間の悲喜こもごもが描かれるようだ。公開されているトレイラーでも、「そりゃまぁそうなるよね」というカオスな状況で俳優たちが奮闘する様子が見られる。