【中央時評】弾劾可決以降の韓国社会の課題
時には外部の視線が厳しいこともある。英紙ガーディアンは「12・3非常戒厳事態」を「奇怪でぞっとする」と伝えた。米AP通信は6時間で終わったこの事態を「韓国民主主義の勝利」と報じた。その後の国会弾劾案可決までの時間は国民多数の意による予定された経路だった。民主主義が国民が主である政治制度であることを我々の社会は改めて生々しく証明した。 2年前、私は米スタンフォード大学アジア太平洋研究センターでシン・ギウク所長と共に『South Korea’s Democracy in Crisis(危機の韓国民主主義)』を編集して出版した。「非自由主義、ポピュリズム、二極化の脅威」がサブタイトルだった。我々2人は周期的な選挙の手続き的民主主義はもちろん、行政府と立法府の間の権力均衡が作動しているにもかかわらず、お互いを否定する陣営政治と不平等の解決に無力な政府および政党の信頼低下が我々の民主主義を危機に向かわせているという事実に注目し、強調した。 3日から14日までの11日間、戒厳と弾劾の過程を見ながら2つの考えが浮かんだ。一つは民主主義の危機がどのように表れるかだ。『危機の韓国民主主義』の「序文:韓国民主主義の衰退」で、我々2人は民主主義の危機の具体的な信号として5つを挙げた。相手政治勢力に対する否定と悪魔化、政治の司法化と司法の政治化、「二重基準」に基づく民主主義ゲーム規則の毀損、市民社会の過度な理念対決構図、国粋主義的ポピュリズムがそれだった。ところが米外交専門誌フォーリンポリシーも指摘した大統領の「親衛クーデター」で我々の民主主義が危機を迎えることになるとは全く予想できなかった。非常戒厳を発動して民主主義を脅かす「超現実的危険政治」がまさに2024年の韓国社会の肖像だった。 もう一つは我々の民主主義の回復弾力性が驚くほどだったという事実だ。民主主義を危機から救い出したのは市民社会と政治制度の力だった。12月3日夜、市民は切実に国会を守り、国会は制度的に戒厳を阻止した。民主主義は制度と意識が共に進むシステムだ。14日の弾劾案可決まで市民社会は路上と職場で弾劾を積極的に応援し、政治社会はこれに呼応して「極めて危険な大統領」の職務を合法的に停止させた。相互作用してシナジーを発揮する「制度政治と市民政治のツートラック民主主義」はまさに我々の民主主義回復弾力性の源泉だった。 14日の弾劾案可決を分岐点に「弾劾審判の時間」が開かれた。ここに2016-17年の経験を振り返ると、「大統領選挙の時間」が加わるだろう。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の弾劾は憲法裁判所が180日以内に最終審判を出すが、弾劾審判後60日以内に新大統領を選出しなければならないだけに、審判の時間と選挙の時間が重なって続くとみられる。 国会の弾劾案議決以降、我々の社会に付与された重大な課題は2つある。一つは、弾劾審判の期間は不確実性の時間だ。不確実性の時間をできる限り減らし、国家正常化を迅速に進めなければいけない。したがって憲法裁判所の弾劾審判はもちろん、尹大統領の内乱容疑捜査が厳正かつ迅速に進行する必要がある。また、政府と与党、そして野党は党派的な利益を越えて国家的な利益を優先視し、経済・社会・国際関係に広がる危機を最小化できるよう積極的に協力することが求められる。具体的に国政の両軸となる経済と外交・安保領域で与・野・政はもちろん、主要関連団体が参加する非常対応ガバナンス体制を構築して運営しなければいけない。 一方、弾劾審判過程の水面下では実質的な大統領選挙競争が徐々に本格化するだろう。現在、我々の民主主義が向き合った現実は寛容と共存を拒否する非自由主義、敵対的な亀裂を扇動するポピュリズム、不平等の構造化と陣営政治の強化として表れる経済・政治的な二極化からの脅威だ。このような現象が示しているのは87年体制の限界だ。87年体制の5年単任帝王的大統領制を越える新しい権力構造と政治秩序を用意しなければ、我々の民主主義は2016年と今年の事例にみられるよう危機を繰り返し経験する可能性が高い。もう一度強調するが、民主主義を支える2つの力は制度と意識だ。来年の春と夏のいつか大統領選挙が行われる場合、その大統領選挙の主な議題の一つに87年体制を克服する改憲の具体的なプログラムを含めなければいけない。 禹元植(ウ・ウォンシク)国会議長は弾劾案可決後の最後の発言で「大韓民国の未来は、我々の希望は、国民の中にある。希望は力が強い」と述べた。詩人キム・グァンギュ氏は「希望」という詩で、希望を「誰かが我々に与えるのでなく、戦って得て守らなければいけない」ものだとした。この11日間は戦って得て守った我々わの民主主義の力と希望を再発見した時間だ。希望は力が強い。希望を抱いた人たちだけが新しい未来を開くことができると私は信じる。 金皓起(キム・ホギ)/延世大社会学科教授