将棋は中学受験に役立つのか? 将棋連盟とSAPIX、東急が検証開始
将棋は一手ごとに大局観を持って形勢を判断し、読みを入れ、決断して指す。これは学習における、設問から解答パターンを推測し、公式や過去に解いた問題を当てはめ、先の展開を考え、解答するというプロセスと酷似する。
つまり、棋力が上がれば先を読む力、論理的思考力、試行錯誤を重ねる集中力などが向上するのだという。本田さんは「将棋の頭の使い方は、国語・算数・理科・社会の学習に応用できる。将棋は学校の勉強、ひいては中学受験に役立つことを実証し、可視化したい」と意気込む。
■思考力テストで比較
将棋が強い人は頭がいい、棋士は勉強が得意-。古今東西、漠然と言われていることではあるが、学力と棋力の関連性を明確に示すデータはない。
仮説検証に活用するのは、サピックスが実施する小3対象のテスト。計算力や暗記力よりも思考力を重視する問題の成績を、将棋経験のない児童らと比較し「将棋の効能」を計るという。尺度はテストの成績だけでなく、授業中の子供の変化をつぶさに観察して肉付けし、「正解のない問いを考える力」がどれほど養われたかを検証する。
日本将棋連盟の西尾明常務理事は「将棋が論理的思考の育成につながるのか、子供たちの教育にどういう形で効果があるのか、検証することは有意義だ」と、かつてない取り組みに期待を寄せている。
■棋士と学力
「兄たちは頭が悪いから東大へ行った。自分は頭が良いから棋士になった」
かつて米長邦雄永世棋聖(故人)が発言したと伝わる言葉に代表されるように、棋士はおしなべて学力が高いとされる。
棋士になるには小中学生のうちに養成機関「奨励会」に入るのが王道だが、中学受験と両立した棋士は少なくない。今をときめく藤井聡太七冠(22)も、中学受験の経験者だ。
A級棋士の中村太地八段(36)は早稲田実業中等部、チェス日本一に輝いたこともある青嶋未来六段(29)は麻布中学の出身で、いずれも奨励会在籍中に難関校に合格している(田中万紀)