「ADHDなど存在しない!」「うつも勘違いだ!」患者も逃げ出す"ヤバい精神科医"の実態
太郎 僕はネットで『ADHD(注意欠如・多動症)』という言葉を知って、自分でも思い当たる節があったので、当時の先生に自分はそうじゃないか聞いたんです。 するとその先生は、「そんな病気はこの世には存在しない。うつだって多くは勘違いなんだ」と頭ごなしに言われちゃいました。仕方なく別の病院を受診して、ADHDの診断を受け、治療薬を出してもらいました。自分にはその薬の効果があったので、転院して正解でしたよ。 アヤメ (何度も頷きながら)それ、良くわかります。もし内科でインフルエンザと言われればインフルエンザに決まってるじゃないですか。でも精神科では、先生によって病名が変わっちゃうんですよね。 ―― 公認心理師さんから聞いた話なんですけど、発達障害(ADHDやASD)は比較的新しい概念なので対応できる病院が少ないようなんです。ADHDの治療薬・コンサータなどは精神科ならどこでも処方できるわけではなく、処方権限のある指定医でなければ出せません。 アヤメ あと、どうしたら薬を止められるか、通院を止められるかきいたら、途端にあからさまに不機嫌な表情になる先生もいました! あれもなんとかして欲しいです。 太郎 週に一日、休みの日には薬を我慢する努力をしましょうとか、ちゃんと提案してくれる先生もいますけどねぇ。 ――どうしたら治るか、他の科なら当たり前の質問ですよね。うつは治したいに決まってるのに、不機嫌になるってヤバいと思う。症状が不安定な時期であれば「様子を見ましょう」でも仕方ないけど、安定しているのなら出口戦略を提示してくれる先生が、本当に信頼できる精神科医だと思います。 アヤメ 今の先生はとてもまともな先生で、薬を減らすためにも、カウンセリングを活用するよう勧めてくださっていますが、幸い、信頼できるカウンセラーさんに出会うことができて助かっています。 ――どうやってその先生と出会ったのですか。 アヤメ すでにその医院に通っていた友達の紹介ですね。信頼できる友達の紹介が一番当てになるってことですね。 太郎 僕が今かかっている先生も「ADHDの薬については自己判断で量を減らしていい」と言ってくれています。僕は精神疾患の場合、患者は医師に頼り切るのではなく、ネットで情報を得るとか、意識的に生活習慣を見直すとか、どうすれば(症状が)良くなるか、自分で考えなければいけないと思っています。診察室で先生と会話する時間はとても短いですからね。 ヤバい先生に遭遇しながらも、今では精神科との上手な付き合い方を理解したようにみえるアヤメさんと太郎さん。だがそんな彼らも、過去には医師が説明してくれない、ちゃんと話を聞いてくれない、診察時間が短すぎるという不満を抱いていた。 その根底には、いわゆる"5分間診療"がある。国が定める診療報酬の算定方法の影響でこの5分間診療が横行している。本来なら、精神科ほど患者との対話が大切な科はないはずだ。制度改革で診療時間を増やすことはできないのだろうか。 取材・文/桑原和久